純利益が6~10倍、大手海運業者にカルテルの疑い バイデン大統領「不当な値上げを取り締まる」
新型コロナウイルスによるパンデミックは多くの業界にマイナスの影響を与えたが、それとは逆に莫大な利益を手にした業界もある。大手海運会社だ。前年比10倍にも及ぶ利益が明らかになった2021年の決算発表を受け、以前からささやかれていた同業界の反競争的行為の疑いが、さらに色濃くなっている。
◆値上げで純利益が6~10倍に
2021年の決算報告によれば、大手海運会社CMA CGM、APモラー・マースク、ハパック・ロイドの3社は、いずれもその純利益を前年の6~10倍以上に増やした。具体的には、CMA CGMが2020年の17億ドルに対し2021年は179億ドル、APモラー・マースクは、前年比6倍となる181億ドル、ハパック・ロイドも、前年の10億2000万ドルに対して2021年は108億ドルの純利益を上げた。2020年と2021年では運送量にほとんど変わりがなかったため、これは単価の値上げによるものだ。(ル・ジュルナル・ド・ラ・マリヌ・マルシャンド、3/13)
実際、アジアとアメリカ西海岸間の海上輸送費は、コロナ前には40フィートコンテナが1500ドルだったが、2021年前期には3000ドル、10月には6000~6500ドルと上昇を続け、2022年には7000~8000ドルの高値になっている。(同)
◆パンデミックに乗じた値上げ?
常時であればあり得ない率の値上げだが、海運会社らはパンデミックによる人員不足・コンテナ不足を理由にこれを正当化してきた。だが実際には、値上げ率は運用コストの増加率を大きく上回っている。たとえば、APモラー・マースクは、昨年平均83%値上げをしたが、同時期の運用コストは21%しか上がっていなかった。ハパック・ロイドにしても、2021年最初の9ヶ月での運用コストが16%上がったのに対し、輸送費の値上げ率は平均66%、アジアと米西海岸を結ぶ便に限れば75.3%に及んだ。(同)
これによりいずれの社の株主も大きな恩恵を受ける見込みだ。ハパック・ロイドを例にとれば、株主配当金は前年の10倍と見積もられている。(同)