ロシアに重くのしかかる「頭脳流出」 優秀な人材が大量脱出 経済に長期的ダメージ

銀行に列をなすモスクワ市民(3月12日)|AP Photo

 ロシアによるウクライナ侵攻で、多くのロシア人が国外に逃げ出しているが、なかでも多いのがハイテク人材だという。西側の大規模制裁で、ロシアに未来はなくなったという悲観的見方が広がっているためだ。彼らを失うことで、ロシア経済は破壊的打撃を受けると見られている。

◆好調だったハイテク産業 制裁で持続不可能に
 中東欧、ユーラシアなどのビジネスニュースサイト『インテリニュース』は、ロシアは天然資源に加えハイテクに精通した人材資本が豊富なことを強みとし、テクノロジー大国への道を歩んできたと述べる。IT市場は2019年だけで7%成長し、規模も総額250億ドル(約3兆円)に達し、数百万人が雇用されていた。

 ところが、西側がチップや半導体などの重要な技術部品への制裁を決め、外資の大手ハイテク企業がロシアから撤退したことなどにより、今後の見通しは極めて厳しくなっている。ルーブルは暴落し、クレジットカード会社もロシアでの事業を停止した。ロシア企業が必要な部品やサービスの代金を払えるかどうかさえ不透明なうえ、顧客も制裁でロシアには送金できなくなっている。(同)

 結果として、ロシアから技術系人材がかつてない規模で流出することになった。多くは中央アジアやトルコに向かい、ビザを取得できる者は欧州に移動している。ロシアの政治ビジネスニュースを伝えるサイトによれば、ロシア脱出を議論するテレグラムのグループのなかには、現在メンバーが3万人に上るものもあるという。(同)

 フィナンシャル・タイムズ紙(FT)によれば、最近になって当局が戒厳令を敷く、国境を閉鎖する、徴兵が行われるなどの噂が広がり、ロシア人の出国スピードは加速している。

Text by 山川 真智子