1人当たり購買力平価GDPで日本抜いた韓国 逆転の要因は?

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◆違いは生産性 賃金も上昇
 韓国が日本を抜いた主な理由は生産性、つまり労働時間当たりのGDPが日本よりはるかに速く成長したためだとカッツ氏は述べる。1990年代半ばまで、日本は生産性でアメリカに急速に追いつき、ピークの1997年にはアメリカの71%のレベルにまで達した。しかしそれ以来63%にまで落ち込んでおり、欧州と比較しても後退している。一方韓国の追い上げは続き、現在は日本より1ポイント低いだけだ。このままいけば、この指標でも数年で韓国が日本を超えてしまうのは明らかだという。

 英エコノミスト誌も、変化の多くは生産性に起因していると述べる。2000年以降、韓国の労働時間当たりのGDPは2倍になった。数十年間低い生産性上昇率に苦しんできた日本では、同じ指標で4分の1以下しか伸びなかった。日本の生産性が伸びない理由として、同誌は少子高齢化とデジタル化の遅れを上げている。

 カッツ氏は、韓国が日本を追い越したもう一つの理由として、生産性向上の成果を労働者に還元していることを上げる。1990年から2020年までの30年間、日本の年間実質賃金はほとんど上がっていないが、韓国ではほぼ倍増しており、韓国の労働者は日本の労働者よりも高い賃金を享受していると述べている。これは非正規労働の増加による統計上のゆがみではないと同氏は解説している。なぜなら韓国も同じパターンだからということだ。

◆課題は山積み 高齢化も深刻
 もっとも韓国に問題がないわけではないとカッツ氏は述べる。日本の成長を阻害した構造的欠陥が韓国にもあり、低賃金の非正規労働者が労働力の3分の1を担っているという問題もある。また、ハイテク部門と生産性の低い製造業やサービス業が混在するという二重性にも悩まされているという。

 コリア・ヘラルド紙は、韓国でも生産年齢人口が減少し、高齢人口が急増する日本と同じ道を歩んでいると述べる。70歳以上を見れば、日本は5人に1人、韓国は10人に1人の割合だ。しかし2010年から2020年の間に韓国の70歳以上の割合は3%近く急増しており、高齢人口の増加は1人当たりのGDPの伸びを抑制する懸念がある。

 エコノミスト誌は、韓国の経済状況はスタート地点がはるかに低かったため、急こう配になっていると指摘する。また成長の原動力であった重工業が、世界的な気候変動への取り組みの影響で負債になりつつあるとしており、日本同様課題は尽きないと見ている。

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Text by 山川 真智子