アフリカEV最新動向:高まる関心、スタートアップへの期待

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◆EV普及の鍵を握るスタートアップ
 1人当たりの自家用車保有レベルが他地域に比べて低いアフリカにおいて、EV市場拡大が期待されるのが、バス、タクシー、バイクタクシーなどといった自家用車以外のセグメントだ。こうしたセグメントにおいては昨今、スタートアップの展開や投資が活発化している。たとえば、ケニアでディーゼルバス、ガソリンバスを電気バスに切り替える事業を展開するオピバス(Opibus)は、プレシリーズAラウンドで750万ドルを調達。電気バスと電動バイクの生産・展開を本格化する計画だ。同社は来年の第1四半期には最初の電気バスを展開開始する予定。電動バイクに関しても、すでにプレオーダーを受け付けている。バッテリー容量に応じた価格は1300ドルからとなっている。ガソリン燃料のバイクに比べて、ランニングコストを最大6割まで抑えることができるとしている。オピバスは、ナイロビ周辺の主要な町において、共有の充電ステーションの導入も進めている。また、もう一つのスタートアップ、バシゴー(BasiGo)も、ケニアにおける電気バスの導入を進めている。同社は中国のEVメーカーの部品を使って、ケニアの現地工場で組み立てたバスを展開する予定だ。スタートアップは2社とも、ケニアからアフリカ各国への市場展開を見込んでいる。

 バイクタクシーが主要な交通手段の一つである東アフリカ地域では、電動バイクのいくつかのスタートアップも資金調達を成功させ、今後事業拡大を進める予定だ。たとえば、ルワンダで電動バイク事業を展開するアンパーサンド(Ampersand)は、米国際開発金融公社(DFC)から900万ドルの借り入れを行った。同社は、車両の販売・リースと、バッテリー交換サービスを組み合わせたビジネスモデルを展開する。ドライバーは、購入もしくは「乗った分だけ支払う(pay-as-you-drive)」システムを通じて、アンパーサンドの電動バイクを利用する。バッテリーが少なくなったら、同社のバッテリー交換ステーションで、新しいバッテリーと交換することができる。ガソリン給油と同様の利便性と、給油より早いスピードでのサービス提供が売り。アンパーサンドは2019年5月の開始以降、5万件のバッテリー交換と、56台のバイク・ドライバーによる総計200万キロの走行実績がある。今回の資金調達により、さらなる電動バイクの走行台数の拡大を狙う。また、隣国のウガンダでも電動バイクのスタートアップ、ゼンボ(Zembo)が豊田通商のCVCであるモビリティ54などから、340万ドルの資金調達を行った。ゼンボは2018年に設立されたウガンダで事業展開を行うフランスのスタートアップ。今回の資金調達を受け、電動バイクの台数を2000台増加し、60以上の充電・バッテリー交換ステーションを設立することを計画している。

 EV展開はまだ限られているアフリカ市場だが、いくつかのバスやバイクタクシーのサービスを展開するスタートアップが盛り上がりを見せている。スタートアップのさらなる成長が、今後のアフリカEV市場拡大に向けた一つの鍵を握っていると言えそうだ。

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Text by MAKI NAKATA