もはやギャンブル? 通貨暴落で混乱も 異例の政策続けるトルコ大統領
◆インフレ貧困世帯直撃 低金利で投資家も逃避か?
インフレと通貨の切り下げは最も経済的に弱い立場にある人に壊滅的打撃を与えている。貧困家庭を支援する団体によれば、多くの貧しい世帯では食費が足りず、光熱費の支払いもできなくなっているという(NPR)。
通貨が暴落して人々の貯蓄の価値が下がったため、衣料品などに使える国民の可処分所得も減っている。トルコ統計局によれば、消費者信頼感指数は10月の76.8から11月は71.1に低下している(ファッション業界誌ビジネス・オブ・ファッション)。
さらに、大統領の政策に対する市場の信頼が失われると、より連鎖的な金融問題が発生するのではないかという懸念もある。政策立案者が誤った手段で経済問題の解決を図ると、システムにさらなる不安定性をもたらすとエコノミストは説明している。(アクシオス)
通貨切り下げで輸出競争力が高まり経済活動と雇用が促進されることにエルドアン氏は賭けているようだが、トルコの輸出産業の多くは海外からの原料輸入を必要としており、通貨の急落であらゆる種類の輸入品は高価になっている。さらに、トルコ国債を購入した外国人投資家も現状に嫌気が差しており、償還期限の来た国債の借り換えが困難になることも予想されるという。外国人投資家を引きつける利上げがなければ、国内の銀行や預金者に頼らざるを得なくなるかもしれないという見方もある。(同)
◆求心力低下、次期大統領選への影響は?
通貨危機は、エルドアン氏の政治生命に影響を与えるのではないかという意見もある。2017年にトルコは国民投票で議院内閣制から大統領制へ移行したが、大統領制支持を国民に訴えたのがエルドアン氏だった。システムを変えればすべてが解決すると国民に約束したにもかかわらず、すべてが悪くなっている。次の選挙は2023年までに実施しなければならないが、経済が回復しない限り、エルドアン氏は選挙をできる限り先延ばしにするのではないかと言われている。(NPR)
もっとも、無謀ともいえる金融政策の下でも、第3四半期のトルコのGDPは7.4%増と依然として高い成長率を維持しており、生産年齢人口も多い。専門家は適切な政策があれば経済的に大きな可能性を秘めているとし、トルコ経済の回復は次のリーダー次第であることを示唆している。(アクシオス)
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