メープルシロップ戦略備蓄を大放出へ 市場をコントロールするカナダの生産者団体
◆OPEC顔負け 価格安定へ生産者団体の関与
ケベック州のメープルシロップは、QMSP により供給が管理されている。政府公認のカルテルのようなもので、同団体が価格を設定し、生産量に上限を設け、売れ残った製品を地元の倉庫に送ることで、OPECが石油市場を支配するのに匹敵するレベルの市場管理を行っているとブルームバーグは解説する。
米公共ラジオ網NPRによれば、ケベック州では大量に販売したい農家は、でき上がったメープルシロップの一部を備蓄用に提供しなければならない。そのうえ、すぐに代金は支払われないという。なぜ農家がこれに同意するのかといえば、戦略的備蓄は自然が引き起こす豊作と不作のサイクルの影響を緩和し、シロップの高価格を維持するための手段だからだ。
QMSPの戦略的備蓄のおかげで、生産者は価格を高く維持し、ビジネスをより予測しやすくするシステムの恩恵を受けていると言える。一部を除きすべての生産者が中央機関にシロップを販売しなければならないことの問題点を指摘する声もあるが、QMSP設立前は、生産者がシロップだけで生計を立てることは考えられなかったとウェブ誌『クオーツ』は説明している。
◆泥棒も注目、いまや天然資源扱い
2020年時点で、ケベック州は世界のメープルシロップの73%を生産しており、その最大の顧客はアメリカで、カナダの輸出量の60%を占めている。2位以下はドイツ、日本が続いている。世界の市場は石油に比べれば小さいが、メープルシロップは2020年にはカナダに約4億ドル(約452億円)以上の収入をもたらした優等生だ。(クオーツ)
実は2011年から2012年にかけて3000トン、金額にして2000万カナダドル(約18億円)のシロップがケベック州の倉庫から吸い取られるという事件もあった。まさに戦略的に備蓄する価値のある「黄金の液体」と言えそうだ。
【関連記事】
英国でCO2不足、食料品がスーパーから消える? 業界団体が警告
コーヒー豆の供給懸念強まる 都市封鎖でベトナム産の輸出停滞
中国の豚肉不足が深刻化 政府の備蓄も残りわずかか
- 1
- 2