欧州の天然ガス不足が深刻に 電気料金高騰、冬控え懸念高まる
◆消費者は不安、生活費にも影響
エコノミスト誌によれば、昨年9月では欧州の平均的な家庭が1年間に暖房に使う費用は119ユーロ(約1万5400円)とされていたが、現在は738ユーロ(約9万5800円)に跳ね上がっているという。そこで欧州各国は、産業や消費者を守るため電力料金にかかる税金の削減や、貧しい消費者の保護に乗り出した。独自の緊急計画で対応する方針を示す国々もある。(政治誌ポリティコ)
イギリスではガス料金には上限価格が設けられているため、消費者は守られると政府は説明している。しかしガス価格の高騰によりエネルギー供給会社が破綻し、結局は新契約のもとで家庭の光熱費が上昇しそうだ。ガス貯蔵量はほかの欧州の国々に比べかなり少なくなっており、他国の需要が高いことから確保にも苦戦するのではないかと見られている。ガス料金はEUの平均よりも低い水準でこれまで推移してきた。しかし人手不足や食料品価格上昇などの経済問題に加え、ガス価格の上昇が生活費の上昇につながり、国民に不満が広がっている。(BBC)
◆再エネ移行期の苦しみ どうなる今冬?
エコノミスト誌は、各国政府は再生可能エネルギーの断続性を十分に考慮していないうえに、低炭素で常時稼働するエネルギー源である原子力発電が少なすぎることが問題であると指摘する。光熱費が上がると、有権者は怒り、貧しい人が苦しむが、政府がガス事業に介入したり補助金を出すと、エネルギー不足が悪化し、政治家の環境問題へのコミットメントが口先だけのものになってしまうため、福祉制度を利用した家計支援やエネルギー市場が効率的に機能する支援を行うべきだとしている。
ポリティコは、EUの場合は再生可能エネルギーの能力を高めることで、いずれクリーンかつ安価なエネルギーで需要を満たすことができるようになると予測する。しかし、天候不順の際に再生可能エネルギーを蓄えることができる大規模な電池が開発されるまでは、現在のような状況に陥り続けるだろうとしている。もっとも国際エネルギー機関(IEA)のビロル事務局長は、クリーンエネルギーへの移行は今日のガス・電力市場に見られる問題の解決策であり、問題の原因ではないとしている。
この冬のガス需要は天候次第で、現時点では予測は難しいと各メディアは見ている。寒さが続けば壊滅的な被害になるという見方もあり、エネルギー転換期の非常に厳しいストレステストになる可能性もある。
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