「米はTPPに戻るべき」中国加入申請、米識者から焦りの声

上海の洋山深水港|Chinatopix via AP

 環太平洋パートナーシップ協定(TPP)は一時アメリカの離脱で消滅するのではないかと危惧されたが、日本を中心に11ヶ国で再出発し、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP、通称TPP11)として無事2018年に発効した。しかし対立する中国と台湾が先日、正式に加盟申請を表明し、ただならぬムードになってきている。アメリカでは、中国が加盟することになれば大打撃だとし、TPP回帰を求める声が出ている。

◆トランプ氏の一声で、アメリカ主導から脱退へ
 TPPは、オバマ政権下のアメリカ主導でルール作りが行われた。フォーリン・アフェアーズに寄稿したアジア・ソサエティのウェンディ・カトラー氏は、世界で最もダイナミックな経済地域における貿易と投資を管理する共通のルール導入が目的だったと解説。また他国にTPPの市場ベースの規範を採用するよう促し、中国の国家主導の経済モデルに代わる魅力的な選択肢を提示するものであったとしている。

 2009年にアメリカが交渉参加を表明した後、日本を含む各国が追随し2015年に交渉は終結した。しかしアメリカの労働者を犠牲にして大企業の利益増大に貢献するものだと中道左派から反対され、米議会では批准されなかった。さらに右派、とくにトランプ氏のようなポピュリストやナショナリストからの反発も強く、TPPは雇用の海外流出、貿易赤字拡大につながると批判され、国内でも支持を増やせなかった。結局トランプ氏は大統領就任1週目で離脱を命じた。(フォーリン・アフェアーズ)

Text by 山川 真智子