急成長する南アフリカのeコマース パンデミック後も成長の見込み

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◆ローカル・ブランドと大手スーパーのEC拡大
 米アマゾンや、「アフリカ版アマゾン」と称されるナイジェリア拠点のジュミア(Jumia)も、南アフリカで展開しているが、ECサイトの上位大半はローカル・ブランドが占める。業界トップは、アマゾンに似たマーケットプレイスのTakealot.comだ。Takealot.comは、米国の投資会社Tiger Global Managementと南アフリカの実業家のキム・リード(Kim Reid)が既存サイトTake2を買収し、2011年6月から本格展開を開始した事業。現在は、南アフリカのインターネット・メディア企業のナスパーズ(Naspers)の子会社で、系列のECブランドにはファッションに特化したSuperbalist.comと、フードデリバリーのMR D Foodがある。Superbalist.comは、イーコマース・サイトのランキング第2位の人気サイトだ。WWWの報告によると、Takealot.comの昨年の第3四半期における売上は85%増と大幅に成長した。

 ランキング3位は、衣料品から食料品まで扱う高価格帯のスーパーマーケット・チェーン、ウールワース(Woolworths)のウェブサイト。ウールワースも、パンデミック下において大きく売上を伸ばし、昨年上半期の売上は88%増となった。2020年3月下旬に開始したロックダウン後、南アフリカの各スーパーマーケットはEC事業のインフラ整備を加速させた。アフリカ大陸のスーパーマーケット・チェーンを展開する最大手のショップライト・ホールディングス(Shoprite Holdings)傘下のブランド、チェッカーズ(Checkers)は、携帯アプリベースのECサイトCheckers Sixty60の展開を本格化。最大の特徴は、営業時間内であればオーダーから60分以内にバイク便で商品が配達されるという利便性だ。筆者も何度か利用したが、約束通り、ほぼ1時間で商品が配達された。アプリのUI/UXも快適な使用を可能にするデザインで、品切れの場合の代替商品指定やキャンセルの指示もできる。ウールワースは、ロックダウン以前からECサイトを整備していたものの、当初配達はリードタイムの長さが課題だった。しかし、現在は即日配達と店舗受取が可能になっている。また、南アフリカのもう一つの大手スーパーマーケットチェーンであるピッカンペイ(Pick n Pay)も、2018年からパートナー契約を結んでいたECアプリのボトルズ(Bottles)を買収し、Checkers Sixty60同様のバイク便配達によるEC事業を本格化させた。

 南アフリカのEC市場はまだ初期段階だが、パンデミックが転換期となり、今後さらなる成長が期待される。とくに都市部に関しては配達インフラが発達し、ナイジェリアのペイスタック(Paystack)などB2Bフィンテック企業の市場拡大とともに、電子的な支払方法の選択肢がさらに広がることが予測される。また企業側のECインフラの充実に伴うEC利用の拡大と、ロックダウン中に消費が抑えられた反動からのEC消費拡大が期待されている。前出の報告書を作成したWWWは、2021年度は40%の伸び率を予測。2022年には、小売におけるECの比率が5%まで増えると予測している。貧富格差が大きい南アフリカにおいては、より多くの所得層を視野に入れたサービス展開が、EC市場のさらなる拡大のための必須条件となるだろう。

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Text by MAKI NAKATA