日本のレアアース戦略も参考に? 中国依存脱却に動くアメリカ

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 レアアースは、スマートフォンや電気自動車などに使用され、現代の産業には欠かせないものとなっている。米中対立が続くなか、レアアースの80%を中国に依存しているアメリカは、サプライチェーンの見直しに乗り出した。中国の資源ナショナリズムに対抗する動きだが、課題も指摘される。

◆かつてはレアアース大国のアメリカ、中国独占に危機感
 中国は世界のレアアースの7割以上を採掘し、それを電気自動車のモーターや風力発電機などに使われる磁石にする複雑な工程の9割を請け負っているとされる。この圧倒的支配によって、中国は急成長するテクノロジー企業に対する影響力を得ている。(ウォール・ストリート・ジャーナル紙、以下WSJ)

 実は1980年代以前の数十年間、レアメタル生産の大半を占めていたのはアメリカだった。ところが他国でも生産が拡大したことや国内での環境保護の圧力が高まったことで、自国から生産が海外にシフト。海外の安い労働力も後押しし、状況が変わってしまった。2018年の米国防総省発表の報告書は、中国は現在および未来のライバルを追い出す、または抑止するため、戦略的に世界市場を自国の安いレアアースでいっぱいにしたとしている。買い手は1ドルでも安いほうを求めるため、市場は中国の独占となった。(CNBC

 現状を変えるため、バイデン大統領は2月、レアアースを含む重要素材のサプライチェーンの見直しを指示する大統領令に署名した。米政府は、レアアースの採掘と加工に数千万ドルを投じており、レアアース分離プロジェクトへの投資を約束している。欧州、カナダ、日本やオーストラリアなどもこれに支出する予定だという。(WSJ)

Text by 山川 真智子