続く英有名私立校の中国進出 バイリンガル教育の需要増
◆自由な学びに制約 政府の関与強まる
中国人学生を受け入れるインター校では、当初は管理に関する規則があまりなかったという。ところが近年、中国共産党が学術界への影響を強めていることで状況が変わった。北京を拠点とする教育コンサル会社ベンチャー・エデュケーションのジュリアン・フィッシャー氏は、規制がより厳密になり、より厳しく監視されているという感覚が業界に浸透していると話している(クオーツ)。
英タイムズ紙によれば、3月に中国教育部の学校評価の新指針が示され、現地の生徒を教える学校は、バイリンガル私立校でも中国が定めたカリキュラムに従うことが必要となった。厳しい規制を嫌い、進出先を他国に変更したり、撤退を検討したりする動きが一部の学校で出ているという。
タイムズ紙のインタビューを受けたイギリスの国会議員は、意識の高い新世代のイギリス人学生や保護者が、中国に投資する名門校への入学に消極的になる可能性もあると指摘。中国に分校を持つことは、アパルトヘイト時代の南アフリカで開校するのと同じぐらいリスキーだと主張している。学校選びをアドバイスする『グッド・スクールズ・ガイド』の編集者は、そもそも中国に学校を持っていることを認めたがらない私立校も多いと同紙に話している。
◆発展続く中国 長期的には市場はさらに拡大
もっとも、中国のバイリンガル教育の需要は非常に高く、今後は外国人用のインター校を中国人用のバイリンガル校が凌駕すると見る専門家も多い。急速に市場が拡大しているのが、香港、マカオ、広東省を含めた「グレーターベイエリア(粤港澳大湾区)」と呼ばれる地域だ。人口7200万人を抱え、若い富裕層の家庭や高度なスキルを持つプロフェッショナルの割合が高い。インター校がターゲットとしている層が集まっており、ハロー、キングス、ウィコム・アビーなどの名門校が、この地域にすでに開校、または開校を予定している(SCMP)。
フィッシャー氏によれば、広州や深圳のような地方政府もまた、フォーチュン500企業や高いスキルを持つその従業員などを呼び込む手段として、インター校を利用しているという。新たな開校場所を見れば、政府が商取引や貿易を推進したいと考えている場所をほぼ把握することができるということだ。(クオーツ)
ベンチャー・エデュケーションの2020年の報告書では、一連の新規制で英私立校の成長が一時的に鈍化したかもしれないが、「不正競争を規制する中国市場のコンプライアンス強化」により、長期的には市場全体が恩恵を受ける可能性があるとしている。教育内容で妥協できれば、英ブランド校の商機はまだまだ続くようだ。
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