英高速鉄道「HS2」、問題山積も継続 コスト上昇、環境への懸念

セント・パンクラス駅に停まるイギリス鉄道395形電車|photocritical / Shutterstock.com

 イギリスで、首都ロンドンとイングランド北部を結ぶ高速鉄道「HS2」の工事が進行中だ。フェーズ1が2020年9月に着工し、建設の是非を検討していた次のフェーズにもゴーサインが出た。しかし膨らみ続ける費用や環境活動家からの強い反対などもあり、不安のつきまとう巨大プロジェクトとなっている。

◆南北格差解消へ 英経済活性化なるか?
 HS2は、総延長約530キロ、最高時速360キロを予定。ジョンソン英首相は計画をインフラ革命と呼び、現代のイギリスで最も重要な国有鉄道の拡張事業としている。建設は3段階に分かれており、フェーズ1はロンドンとウエスト・ミッドランズ州のバーミンガムを結ぶ路線だ。フェーズ2は2本に枝分かれし、一つはバーミンガムから主要な鉄道ジャンクションであるクルーを経由して、マンチェスターなど北西の都市まで伸びる。この路線はフェーズ2aと呼ばれており、2月11日に議会によるクルーまでの延伸承認が発表された。もう一つはイースト・ミッドランズ州を通り北部のリーズに向かうフェーズ2bとなっている。

 高速鉄道計画は2007年に浮上。その背景として、サービス業などで潤うイングランド南部と、製造業の衰退で苦しむ北部との間の経済格差があった。南北を高速鉄道で結ぶことで、北部経済の活性化に加え、新たな雇用の創出も期待される。全体で数万単位の新規雇用が見込まれ、フェーズ2aの建設により北部だけで少なくとも5000人の雇用が生まれるとされる。サプライチェーンも含めればさらに増え、メンテナンス拠点にも多くの恒久的雇用が生まれるとされている。

Text by 山川 真智子