世界で「ワクチン・パスポート」導入の動き 利点と懸念点は?

アプリ「コモンパス」の画面|Michele Ursi / Shutterstock.com

◆進むアプリ開発と業界の声
 しかしながら、国々の意向とは別に、世界ではワクチンパスポートとなりえるアプリの開発が進んでいる。ユナイテッド航空やキャセイ・パシフィック航空は「コモンパス」を試験的に導入しており、シンガポール航空やアリタリア航空は「AOKパス」を試用済みだ。また国際航空運送協会(IATA)も「IATAトラベルパス」アプリに感染テストやワクチン情報を取り込む方向で開発を進めている。また、アメリカではマイクロソフト社を含む複数のIT企業と医療機関が提携して、ワクチン証明イニシアチブ(VCI)を立ち上げ「スマート医療カード」開発が始まっている。

 また、旅行業界はワクチンパスポートに大きな期待を寄せており、財界も肯定的に捉えているようだ。たとえば、フランスの経団連にあたる企業経営者連合(MEDEF)は、年間32万5000人の雇用と320億ユーロが動く同国の展示会が開催できるよう、ワクチンパスポートの導入を要請する動きを見せた(フランス・アンテール、1/11)。

 ワクチンパスポートは不在ながら、ワクチン接種を条件に、制限なしの入国を認める国もすでに出てきている。フランス24(2/2)によれば、「ルーマニアがそうであるし、キプロスも3月1日から抗Covidワクチン接種の証明ができる乗客には隔離を免除すると、同国運輸大臣が12月頭に発表した」。また、東アフリカの島々「セーシェル共和国は1月15日から、ワクチン接種を終えていることを条件に、観光客を受け入れている」。また、20 minutes(1/17)によれば、オーストラリアのカンタス航空も、「オーストラリアに来る海外旅行者に有効なワクチンパスポートを要求することを検討」しているという。

 こうして見ると、世界は徐々にワクチンパスポート導入へと傾いているように思われる。利点も多い構想だが、導入にあたっては慎重派の国々などがあげている懸念点に十二分に気を配らなければならないだろう。

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Text by 冠ゆき