世界で「ワクチン・パスポート」導入の動き 利点と懸念点は?

アプリ「コモンパス」の画面|Michele Ursi / Shutterstock.com

◆すでに導入した国、開発を決めた国、慎重な国
 国別では、どういう状況だろうか? アイスランドは1月21日に世界に先駆けてデジタルワクチン接種証明書をリリースした。アイスランドはシェンゲン協定加盟国だが、EU加盟国ではない。同国保健省によれば、国境検問所でこのワクチン証明書を見せることで、入国先の規則で決められた入国に関する制限を免除されることを目的としており、将来的に、EU、欧州経済領域(EEA)、もしくは世界保健機関(WHO)によって発行された証明書を所持する者には、制限なしでアイスランドへの入国を許可する意向だ(RTL、1/27)。

 EU内では、観光業に強く依存するギリシャやポルトガルがワクチンパスポート構想を支持している。そのほか、ハンガリー、デンマークもワクチンパスポートに積極的な国と言われる。ガーディアン紙(2/4)によれば、デンマークはワクチン接種デジタル証明書の開発を発表しており、スウェーデンもそれに続いている。WHOによると、エストニアも2020年10月からWHOと共同でデジタルワクチン証明書の開発に取り組んでいる。とはいえ、WHOは1月半ばに「いまのところ、(ワクチンパスポート)証明書の導入を、国際移動者の入国条件とすることには反対」(フランス24、2/2)と表明している。

 ヨーロッパ以外ではイスラエルが早くからワクチンパスポートの計画を発表している。1月4日の同国保健省発表によれば、同国が開発したアプリは、「PCR検査の陰性結果から72時間、また2度目のワクチン接種を受けた2週間後から6ヶ月間有効」だという(BFMTV、1/6)。

 一方、ワクチンパスポート導入に慎重な国はフランスやドイツだが、導入に頭ごなしに反対というわけではなく、先に記したような理由で「時期尚早」と考えているようだ。それもあり、EUは共通のワクチン証明書の採用には合意している。またイギリスのワクチン担当相のナディム・ザハウィ氏は7日、「イギリスはワクチンパスポートの導入はしない」と発言した(ロイター、2/7)。

Text by 冠ゆき