スキー場の営業めぐり割れる欧州 国同士、国内で軋轢

Jean-Christophe Bott / Keystone via AP

◆フランスに追随するアンドラ
 ピレネー山脈を挟んでフランスと国境を接するスペインでは、「カタルーニャ地方でCovid-19感染者が再び増えたため、12月3日に制限緩和を一時ストップした」(20 minutes、12/3)ところだが、12月4日、「保健省が、スキー場営業に向けて各地方やフランスと話し合いを続けている旨を発表」しており、12月半ばの開始を望む姿勢だ(20 minutes、12/4)。

 一方、フランスとスペインの間に位置するアンドラ公国は、12月3日になって、1月まではスキー場を開かないと発表した。人口7万7千人の同国にとって観光収入は直接的にはGDPの20%に、間接的には40%に影響するため苦渋の決断ではあるが、欧州、とくにフランスの決定を尊重した形だ(20 minutes、12/3)。

 もともとドイツやフランス、イタリアがスキー場閉鎖を望んだのは、ゴンドラや休憩所など換気のできない密な状況や、リフト待ちの行列を警戒してのことである。加えて、ヨーロッパのスキー旅行はアパートなどを比較的長期間レンタルするのが通常であるため、共用場所での接触も不安の種となっている。実際、2月には、フランスのスキー場の貸しアパートに滞在した英国人からクラスターが発生している(ウエスト・フランス紙、2/9)。

 規則に従順な国民の割合が高いとは言えないフランスが、スキー場営業再開に慎重になるのは理解できる。しかし、スキー場は開けるがリフトは動かさないという決定は、傍目にも要らぬ混乱を引き起こすように思えるし、ましてや、国境の検閲でスキー場に行ったかどうかを見分けるなどは、どう考えても不可能で説得力に欠けるものだ。

 国民が無責任な行動をとるから、取り締まりがエスカレートするのか、それとも禁止や取り締まりが理屈に合っていないから、違反行為に走るのか。まさに鶏が先か卵が先かの不毛な論争だが、政府が国民の信頼を取り戻さない限り、前途多難であることだけは確かだ。このことひとつをとっても、パンデミックは多くの国の指導部にとって試金石となっているといえよう。

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Text by 冠ゆき