欧米より健闘? GDP年率27.8%減、海外メディアはどう見たか
◆現実を反映しない数字 コロナ前から不景気
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美シニア・マーケットエコノミストは、日本の4~6月期が良く見えたのは、すでにコロナ以前の10~12月期に日本経済が縮小していたためで、ピークからの降下のペースから判断すれば、欧米と変わりはないとしている(ウォール・ストリート・ジャーナル紙、以下WSJ)。
ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)も、消費税増税、中国の需要減速、幾度も起こった自然災害などで、日本経済はすでに弱体化していたと述べている。ブルームバーグは、日本は3期続けてのGDP縮小だと指摘。10月の消費税増税ですでに不景気に突入しており、個人消費の減少もその影響が強いとする。よくよく見てみれば、ほかの先進国より日本のほうが状況は悪いという考えだ。
◆救援策は効果あった? 景気は回復傾向
心配されるのは、日本経済の今後だ。NYTは最大の痛みは過ぎ去ったのかもしれないとする。経済的ダメージの多くは4月と5月の緊急事態宣言下に被ったもので、現金給付や無利子融資を含む経済刺激策の効果が出始めているとする。6月からは雇用や消費も回復傾向で、工業生産や輸出も増加していると指摘している。投資グループ、CLSAのニコラス・スミス氏は、日本企業は資金力があり、パンデミックを乗り越える際には非常に役立つと述べる。さらに銀行は手元資金が潤沢なため、融資を受けることにおいて問題はないとしている。
FTは、個人消費や貿易が大きくGDPの足を引っ張ったが、設備投資の寄与度はわずかマイナス0.2%と驚くほど強かったと指摘する。数字は今後改定されることもあるが、これが確かであれば、潜在的な経済の弾力性と強い回復の可能性を示唆するとしている。
◆悲観的成長予測も 感染再拡大も回復に影
ブルームバーグは、年末までには日本はいくらかの回復を見せそうだと述べるが、同時にシンクタンクの悲観的な未来予測も紹介している。日本経済研究センターは、2024年まではコロナ前の成長に戻ることはなさそうだとしている。たとえ東京五輪が行われ、感染状況が年内に和らぎ、旅行も徐々に通常に戻るとしても、コロナの影響は2030年代まで残るとする。政府の負債はGDPの270%にまで増え、税率も上げる必要がある。失業率は9%に達し、企業は借金の支払いに集中するため賃金の上昇が抑えられる。コロナ後には米中関係が悪化し、世界がブロックに分かれてしまう可能性もあるとしている。
日本では7月から感染が再度拡大しており、国内では政府が感染防止対策を緩和するのが早すぎたという不満が出ている。安倍首相は次の緊急事態宣言を出す状況にはないと述べているが、NYTはいつまでも普通に戻れない毎日が続くことが景気回復の遅れにつながるというアナリストの見方を紹介している。WSJは、安倍が8月17日に病院で検査を受けたことを報じ、首相の健康不安も政府の対応に影響しそうだとしている。
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