仏ホテル業界、大手予約サイトに反旗 パンデミックで対立浮き彫りに

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◆Win-LoseでなくWin-Winへ
 だがホテル側が何よりも不服とするのは、パンデミックという世界的危機の最中においても、まったくブッキングドットコム側からの歩み寄りがなかったことである。ムーニエ氏によれば、「本来、変更・払い戻しができない予約への払い戻しをブッキングドットコムに強制されたホテルがあった」ことや、「ホテル産業連合からの話し合いを求めた書面に、一切返事がなかった」ことが、今回具体的に行動を起こすきっかけになったという(20minutes)。コルシカ島のホテル業界も同様で、「片方だけが利益を得る一方的な関係ではなく」相互的な関係を求めている(BFMテレビ)。

 ほかの予約サイトからは歩み寄りが得られたことも、ホテル側のブッキングドットコムへの不信感を強める理由となった。ムーニエ氏によれば、エクスペディアは、ホテル側の書面にきちんと返事をよこしたし、ル・ボン・コワンに至っては2020年12月31日までコミッションを0にし、以後も10%以内に設定するなどの協力が得られたという(20minutes)。

◆新型コロナで芽生えた? 自国の経済を支える意識
 ムーニエ氏は、今回の大胆な抵抗が話題になることで、フランス人消費者の意識が高まればとも考えている。「ブッキングドットコムで一泊120ユーロの予約をすると(中略)フランスに本社がない会社に20ユーロがわたり、(したがって)その分の税金はフランスには支払われないということを(顧客は)知るべきだ」と語る(20minutes)。

 フランスではロックダウン以降、食料品の地産地消を意識する人が増えている。E.ルクレールとイプソス社のアンケート調査によれば、45%のフランス人が以前よりも「国産」にこだわり、「63%はできる限り地元の生産物を消費する」意志を示している(LSA 5/6)。パンデミックをきっかけに高まった、この「地元や自国の経済を支えようという意識」は、ホテル予約にも有効なのか? 今後の展開に注目したい。

Text by 冠ゆき