仏ホテル業界、大手予約サイトに反旗 パンデミックで対立浮き彫りに

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 パンデミックにより大きな打撃を被った観光業界。夏のヴァカンスシーズンを前にようやく制限が緩和され始めたというのに、フランスのホテルのなかには予約サイトをボイコットする動きが出ている。

◆ブッキングドットコムに反抗するホテル
 フランス人が利用する宿泊施設の予約サイトは多々あるが、ずば抜けてその利用率が高いのはブッキングドットコムである。2019年にはオンライン予約を行ったフランス人の59%が同サイトを利用しており、2位のヴォワイヤージュSNCFサイト(27%)に大きく水をあけている(Statista)。

 今回のホテルの行動は、そのブッキングドットコムへの不満によるものだ。まず立ち上がったのは、地中海コルシカ島のホテル業界で、8月の同サイトのホテル予約をブロックした(BFMテレビ 6/17)。また、フランス南部アヴィニヨンのホテル約20軒は、ブッキングドットコム上の7月半ばの宿泊代を300~500%高く表示した(20minutes 6/25)。いずれも、消費者が別の予約サイト、あるいはホテルに直接連絡を入れてくれることを期待した措置だという。20minutes紙によれば、さらにリゾート地カンヌでも、ブッキングドットコムに対する同様の抵抗が画策されている。

◆一方的で不公平感のあるコミッション設定
 ホテルらが持つ不満のひとつは、コミッション(手数料)である。ブッキングドットコムは宿泊施設からコミッションを得ているが、その割合は高く、また一律ではない。コルシカ島のホテル経営者ヴァンセッティ氏は、「10年来コミッションは上がる一方」で、平均15%だと述べる(BFMテレビ)。ヴォークリューズ県のホテル産業連合会長を務めるパトリック・ムーニエ氏も、13~25%と幅があると明かしている(20minutes)。

 コミッション率にばらつきがあるのも不公平感を呼ぶもとだ。たとえば、地中海のビーチ、キャップ・ダグドのホテルは17%なのに、すぐ近くのラ・ボールのホテルは15%、しかもヨーロッパ1のホテルチェーン、アコーは10%なのである(BFMテレビ)。

Text by 冠ゆき