農家にも打撃、新型コロナ 変わる需要、収穫にも不安

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◆収穫できない? 国境封鎖なら労働者入れず
 アメリカの農業は隣国メキシコの労働力に依存しており、新型コロナウイルスによる入国制限を恐れている。すでに米政府はメキシコ国内での一部のアメリカ入国ビザの処理を停止すると発表。国務省は季節労働者のビザは継続して処理するとしているが、どの程度許可されるのかは定かではないとWSJは述べる。20日にはメキシコとの間で国境出入国制限が合意された。労働者の国境通過は現在のところ許されているが、国境が封鎖されれば大変なことになると生産者は話している。

 メキシコ人労働者の感染も心配の種だ。カリフォルニアの地方紙ベンチューラ・カウンティ・スターによれば、ベンチューラ郡の農場では、労働者には作業中一定の間隔をあけさせ、消毒剤や手袋で感染防止に努めているという。同郡では農業は主要産業で、3万6000人の労働者が働いている。彼らが感染すれば、収穫作業に多大な被害が出ることは明白だ。

◆失業者が頼り 外国人労働者に期待できず
 イギリスでも多くの農場が外国人労働者に頼っているが、新型コロナウイルスの感染拡大で深刻な労働者不足になるとガーディアン紙は述べる。毎年6万人の季節労働者が海を渡ってやってくるが、今年はブレグジットの影響で減少すると見られていた。国内の労働者も減少すると見られ、このままでは最大8万人の労働力が不足するという。

 農業団体のリーダーからは、新型コロナウイルス危機の影響で失職した人々に農作業に従事してもらうべき、という意見も出ている。夏の収穫期までに労働者が確保できなければ、多くの作物が収穫されないまま放置されることになる。労働者募集のために政府に緊急の協力を求め、働き手が見つからなければ破産の危機に追い込まれると農場所有者団体の会長は危機感をあらわにしている。

◆今年は先が見えない ストレス高まるばかり
 イギリスでは、最近起きた洪水で農家は大きな打撃を受けており、新型コロナウイルスが追い打ちをかけている。WSJによれば、アメリカでは長年の価格低迷と貿易戦争が一段落し、エコノミストの予測では、今年は農家にとって安定した年になるはずだった。しかし新型コロナウイルスによって期待は裏切られそうで、農家のストレスは最高レベルに達している。今後食糧生産が滞れば、消費者の側にも大きなストレスとなりそうだ。

Text by 山川 真智子