国民に現金を給付、米がコロナ経済対策で検討 ベーシックインカム提唱のヤン氏も協力
◆UBIに注目 歴史的政策実現へ
実は今回の現金給付案に影響を与えたのは、今年の民主党大統領候補者指名を争ったアンドリュー・ヤン氏の考えだと見られている。ヤン氏はすでに選挙戦からは撤退したが、国民一人当たり月1000ドルのUBIを給付するというユニークな公約を掲げ、アウトサイダー候補として大きな注目を浴びた。
ヤン氏は、自動化の時代が来れば仕事はどんどん削減されていくとし、UBIが労働者のための経済的セーフティネットになると主張。単なる生活費になるだけではなく、人々に少しの現金が手元にあることで、新たな学習を始めたり起業したりするなどの選択肢も増え、経済も刺激されると説明していた。
CNBCによれば、実はUBIは自動化の進むシリコンバレーでは以前から議論されており、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ氏やテスラのイーロン・マスク氏なども賛同しているという。ベンチャーキャピタルのYコンビネーターでは2016年からUBI実験が行われているし、カリフォルニア州ストックトン市では、昨年から18ヶ月にわたって低所得者に月500ドルを給付する実験が行われている。感染拡大で、ついにUBIコンセプトが実験場を出て、メインストリームに移る時が来たとCNBCは述べている。
これまでアメリカでは2001年と2008年に不景気のための対応として、納税者に払戻金として小切手が送られたことがある。しかし、収入にかかわらず、納税していない国民にまで制限をつけないキャッシュが配られることになれば、まさに歴史的だとVoxは述べている。
◆党を超えた危機対応 ヤン氏も政権に協力
ヤン氏は自身が立ち上げた団体「Humanity Forward」が出した文書をツイッターで公開し、トランプ政権が給付を検討するにあたり、同氏と連絡を取ったことを明らかにした。同氏は、ホワイトハウスがHumanity Forwardのビジョンを採用してくれたことは大変うれしいと表明。このような状況下で話が進むのは残念だが、国民が一番給付を必要とするときに、家計のやりくりができるようにする方法を提供することが、UBIの役目だと述べている。今後の進展を楽しみにし、円滑な実施のために協力することも約束している。
ヤン氏はこの給付が新型コロナウイルス対策の枠を超えて延長されることを期待しているが、ビジネス・インサイダー誌によれば、ほとんどの政治家は1度限りまたは緊急時の一時的な現金注入と捉えている。CNNによれば、政権は所得制限を設けることを検討しているということで、本来のUBIの形にはまだまだ遠いようだ。
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