なぜ日本では成功? 自国で倒産、消滅の米ブランドたち 3つの理由
♦︎背景1:同ブランドでも別企業
アメリカでは姿を消しつつあるこれら有名チェーンが、日本の消費者に引き続き広く受け入れられているのはなぜだろうか? シティ・ラボ誌は要因として3つのポイントを指摘する。1点目は経営母体の違いだ。日本やアジア地域などで展開するブランドは米国本社ではなく、ライセンス契約を交わした現地の別会社によって運営されている。日本トイザらスは米本社が過半数を出資しているなど例外はあるものの、日本でバーニーズを展開するバーニーズ・ジャパンもセブン&アイ・ホールディングス傘下となっているなど、経営が米国本社から切り離されている例は多い。このため米国の経営危機が直接波及しにくい構造となっている。
タワーレコードも同様であり、日本法人はNTTドコモの子会社となっている。ACCJジャーナルは同社に2002年に事業譲渡されたと紹介し、このため米国の経営破綻の影響を免れたと述べている。世界最大規模の音楽ショップである渋谷店を筆頭に全国約80店舗を運営しており、音楽好きには欠かせない場所として今日も健在だ。
♦︎背景2:アメリカ発祥という看板
アメリカのチェーンが日本で好調な理由の2点目として、アメリカ生まれという評判に後押しされているとシティ・ラボ誌は指摘する。異国の歴史とカルチャーが感じられ、かつセンスある店作りができているチェーンは、日本で歓迎されやすい。アメリカで運営している限り、アメリカ流のスタイル自体が差別化要素になることはない。しかし日本やアジア地域においては、アメリカ発祥という事実が強みとなり、集客のアドバンテージを発揮できるということだろう。
一方でACCJジャーナルは、現地のカルチャーを尊重することこそ日本出店の鍵だと捉えているようだ。ミスタードーナツの日本上陸当時には、アメリカの店舗の完全なコピーが当初想定されていたという。しかし日本側の運営母体であるダスキンは、この方針に反発した。ダスキン社内にアメリカの店舗を極秘に完全再現してテストしたところ、社員の反応が芳しくなかったという。カウンターの高さやカップの重さなどを日本人受けするように入念に調整した結果、現在のような大ヒットにつながったようだ。ほか、店舗の雰囲気の改善や、子供にも愛されるメニューの開発など、さまざまな工夫が導入されている。アメリカ流をプッシュするのも、日本流に徹底してカスタマイズするのも、企業の戦略次第といったところだろう。
♦︎背景3:高い人口密度も貢献か
最後のポイントは、日本の人口密度だ。アメリカで実店舗の経営が危機に追いやられている要因の一つに、ネットショッピングの拡大が挙げられる。しかし日本の人口密度はアメリカのおよそ10倍であるため、とくに都市部に立地する店舗は比較的強い集客基盤を維持できている。シティ・ラボ誌は、こうした地理的な特性が、アメリカで窮地にあるブランドが日本で生き長らえる要因になっていると指摘している。
そのほか日本固有の状況として『クオーツ』は、2016年時点で日本での音楽販売の80%が、CDなど物理メディアでの販売だったと報じている。ダウンロード販売はさほど浸透していないことは、タワーレコードなど実店舗にとって有利に働くだろう。アメリカ生まれのチェーン店が日本で経営難を逃れている背景には、経営母体の違いから消費者の購買行動の差異まで、多様な要因があるようだ。
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