読者は一日3900万人 ドイツ新聞業界の実態と行く先は?

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◆デジタル化への険しい道のり
 発行部数の落ち込みを踏まえ、紙の新聞に見切りをつけ、デジタル部門の拡張に注力する出版社も多い。これまで国内新聞社の4割が大手メディア企業のアクセル・シュプリンガー社やベルテルスマングループの傘下に入り、生き残りを目指しデジタル化へ移行した。有料記事も導入したが、それでも大きな収益は期待できないようだ。

 そんななか、出版業務や不動産、求人サイトなどを経営するシュプリンガー社は傘下のビルト紙とウェルト紙そして新聞広告事業社ASの人員削減を計画中と伝え、業界内に大きな波紋を投げかけた。まず組織改革の一環として、経費削減5000万ユーロと約200人の人員整理を行う模様だとターゲス・シュピーゲル紙は伝えている。

 今年シュプリンガー社は、デジタル部門強化に向けて米投資ファンドKKRと提携した。筆頭株主となったKKRは、まず業績悪化部門から大幅な人員カットや経費削減を進めると強靭な態度を見せた。ビルト紙とウェルト紙の統合もささやかれるなか、「いまのところ計画段階で、詳細や最終措置決定まで数週間要する。多くの点で決議は出ていない」と同社は声明した。

 KKRと協働して世界の巨大デジタルサイトを目指すシュプリンガー社だが、ふたを開けてみれば、逆に苦しい立場に追い込まれていることは明らかだ(シュピーゲル誌)。

 読者が少なくなれば、ジャーナリストの需要も減少する。安定した運営は基盤だが、ジャーナリズムを金銭ファクター最優先で判断するのは健全なビジネスモデルではない。もしそうであれば、新聞業界が崩壊するとメディア専門家は嘆く。また新聞の使命は、真実を伝えること。ネット上にはフェイクニュースが溢れかえっている。この点で新聞業界の強みを出していくことができれば明るい将来があるかもしれない。

 現在ドイツには662のデジタル版新聞サイトがある。紙の新聞がこれに対抗するのは至難の業だ。読者を紙の新聞に引きとどめる良策はあるのだろうか。

Text by noriko spitznagel