トランプ氏「米企業は中国から撤退せよ」、実現可能なのか?
◆企業は困惑 先の展開見えず
米企業の心情からしても、中国完全撤退はありそうもない。すでに高い関税や中国の景気減速を計算に入れ、移転や生産縮小をする企業もある。しかしトランプ政権が終われば米中関係が改善する可能性もあるため、撤退の即断は企業にとっては困難だとNYTは見る。ほとんどの企業は最近の米中関係の展開についていけず、どうにも動けない状況のようだ。
スキルのいらない安い労働力が必要なおもちゃやアパレル工場ならほかの地域に移転可能だが、エレクトロニクス関連ではそうはいかない、とNYTは指摘する。中国で作られる部品の種類は圧倒的に多く、中国ほどサプライチェーンが整った場所はない。ベトナムなどが移転候補地として上げられるが、まだまだ中国の代わりにはなれないということだ。
◆撤退は国益にならず 製造業の国内回帰も困難
識者もトランプ大統領の主張には賛成していない。ハインリック財団のリサーチ・フェロー、ステファン・オルソン氏は、米企業が撤退すれば、中国企業にその穴を埋めるチャンスを与えてしまうと述べる。米中ビジネス協議会のジェイク・パーカー氏は、米企業の撤退は、アメリカにとっては世界的な成長のチャンスを逃してしまうことにつながり、中国にとってはアメリカから得てきた成長のための触媒ともいえる、アイデアや価値、手本などを失うということだと述べる。解決策は、米中が交渉を続け妥協点を見出し、関税を排除し、よりよい関係を作ることだとしており、たとえビジネス環境が悪化しても、米企業は中国から出ていってはならないと主張している(CNBC)。
トランプ大統領の最終ゴールとも言える、米企業の生産を国内に回帰させることも、当面は難しそうだ。全米アパレル&フットウェア協会のリック・ハーフェンバインCEOは、できることならそうしたいが、もうアメリカには工場もなく労働者もいないとし、戻るだけの力がないと嘆く。アメリカ人が皆、もう裸で良いとしない限り、ほかで着るものを調達しなければならないと述べ、一度外に出てしまった製造業を国内で再生させることの難しさを示唆している(Yahoo! Finance)。
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