好調欧州経済に影 製造業が減速、懸念されるいくつかの要因

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 現在のヨーロッパには、二つの経済があるようだ。

 サービス業や消費はおおむね好調、失業率は過去10年で最低水準、インフレも抑制されている。

 一方、主要経済指標をみると製造業は後退しており、欧州大陸で最強のドイツでさえ例外ではない。世界的な貿易摩擦、主要輸出市場である中国の経済減速、忍び寄るイギリスのEU離脱、自動車業界の構造変化などが、製造業に打撃を与えている。

                                                                                                                 

 問題は、製造業の減速がヨーロッパのほかのセクターに波及し、経済危機や苦境を乗り越えて獲得した数年にわたる好調な経済が損なわれるか否かということだ。

「製造業の低迷は、ユーロ圏の主要テーマの一つ」とオックスフォード・エコノミクスのユーロ圏担当主席エコノミストであるニコラ・ノビレ氏は話している。

 6月4日に発表された指標によると、2010年に発生した債務危機とその後2回の景気後退の克服という意味では、共通通貨ユーロを採用している19ヶ国の順調な経済運営が裏づけられた。2019年第1四半期の経済成長率は前期比0.4%増、前年同期比では2.2%増だった。

 ユーロ圏経済のプラス成長はこれで24四半期連続となり、4月の完全失業率は7.6%になった。これは大恐慌直前、2008年8月以来の低水準だ。
 
 2013年初頭の失業率は12.1%で、この1年の間に100万人以上の失業者が職を得たことになる。小売売上高もこの6年間、堅調に増加を続けた。

 経済が好調な地域は多く、ドイツ・バイエルン州の失業率は2.7%という低水準、旧東ドイツにあるザクセン州の建設会社は受注が手一杯のため工事を断っているほどだ。

 一方、アナリティクス企業IHSマークイットの調査によると、5月のユーロ圏製造業は低迷し、とりわけドイツの不調が著しかった。

 EUの自動車メーカーをはじめとする大企業の決算をみても、第1四半期の業績悪化が確認された。

 10年にわたり安定した利益を稼いできたBMWは、自動車製造で営業赤字となった。タイヤメーカーのコンチネンタルも、世界市場をしのぐ業績を確保できたとはいえ、第1四半期の営業利益が16%減少した。

「中国では、2018年下半期にみられた乗用車に対する需要の低迷が続いている」と同社はコメントしている。

 ドイツ・ニュルンベルクに本社を置く自動車用電線メーカーのレオニも営業赤字だったが、「中国の自動車需要の低迷が、ヨーロッパに広がりつつある」と述べている。

 重要な鍵を握るのは関税である。アメリカは、自国の貿易関係を見直そうとして関税政策を果敢に行使し始めている。

 数千億ドルに及ぶ中国からの輸入品にアメリカが関税を課すと、中国も報復関税でこれに応じた。トランプ大統領は中国のみならず、長らく同盟関係にあるヨーロッパやカナダ、メキシコに対しても鉄鋼やアルミに関税を課し、ほかの製品にも適用すると脅しをかけている。

 トランプ大統領の提案のなかでもっとも脅威となるのが、輸入自動車への関税だ。この適用は半年延期されているものの、依然として厄介な懸念材料となっている。

 ウニクレジトのドイツ担当主席エコノミストのアンドレアス・レース氏によると、イタリアとドイツは米製造業に対する補助金、政府取引の制限、免許制度、数量制限といったあまり目立たない分野でアメリカによって160以上の通商措置を課され、「隠れた保護主義」にさらされていると述べている。これに対しフランスへの措置は143である。これらの国々は、数でこそ劣るものの、アメリカに対して報復措置を課している。

 自動車業界では、電気自動車の開発に向けた多額の投資など、関税以外にも業界特有の難題を抱えている。EUや中国で課されている厳しい排ガス規制に対処する必要があるためだ。

 これにイギリスのEU離脱問題が加わる。イギリスは2016年の国民投票において、最大の交易相手であるEUから離脱する決定を下したが、追加関税が課されるかどうか不透明な情勢のなか、国内企業の間では懸念が高まっている。イギリスの政治家は離脱条件でEUと合意することができず、3月末だった離脱期限は10月31日に延期された。

 欧州中央銀行(ECB)では、EUが近いうちに景気後退に陥ることはないとみている。4日、ユーロ圏の金融政策について話し合うために政策関係者がリトアニア・ヴィリニュスに集まり、分断の兆候がみられるEU経済の問題について協議を行った。

 EUの5月のインフレ率は1.2%で、ECBが目標とする2%を下回っている。低インフレは消費者からすると望ましいが、国や企業が債務を削減するのが難しくなるほか、経済が成長しても十分な賃金上昇に結びつかないとみられてしまう。

 ECBは昨年末に2.6兆ユーロ(約320兆円)の景気刺激策を終了させたところだが、現在は追加刺激策の実施を検討しなくてはならない状況にある。今年10月に任期が終了するECBのドラギ総裁は、必要があればあらゆる措置を講じる準備ができていると語る。

 ECBは、早くても今年末としている利上げ実施時期を先延ばしする可能性がある(編注:ECBは6日、2020年上期末まで最低金利を据え置くと発表)。商業銀行に資金を貸し出す際のベンチマーク金利を0%にする一方、ECBへの預金金利はマイナス0.4%となっている。この異例のマイナス金利は、銀行が融資に資金を振り向けるようにするためだ。

By DAVID McHUGH AP Business Writer
Translated by Conyac

Text by AP