インド新幹線、23年完成に黄信号? 難航する土地取得、現地ならではの事情も
◆進まない用地取得
技術面での準備が着々と進むなか、土地取得の遅延によるプロジェクトの停滞が懸念されている。当初予定の2022年までの落成は見込めそうにない、とBBCは指摘する。インド鉄道相は2017年の起工式後、完成に向けた「全面的な努力」を宣言していた。しかし、現在になって関係者の間には、一部の完成が翌年に持ち越されるとの観測が広がっている。野党・インド国民会議のラーフル・ガンディー総裁は、永遠に完成しない「魔法の列車」と揶揄する。2023年12月という期日が新たに設定されたが、専門家からはこれも楽観的すぎるの指摘が挙がっている。
確実な完成時期の目処は立たない。インドでは現在670以上の土地問題が係争中となっており、数十年決着を見ていないケースも存在する。土地取得の難しさがインドのインフラ整備が進まない要因になっている、と米フォーリン・ポリシー誌は指摘している。
事態を憂慮する在ムンバイ日本国総領事館の野田亮二総領事は11日、インディアン・エクスプレス紙の取材に対し、土地取得に関する懸念を表明。グジャラートとマハーラーシュトラの州政府による土地取得を待っている状態だと述べ、日本側に打てる手がないことを強調した。完成予定日への影響に関しては明言を避けた。
◆補償金、郷土愛…… 住民の思惑さまざま
インド高速鉄道公社は昨年末までに取得を終える計画だったが、今年2月時点で契約済みの権利者は6000人中1000人に留まる。BBCは補償金額の低さが不満の種だとし、抗議と複数の訴訟が発生中だと報じている。これに対し高速鉄道のプロジェクト側は、法定の補償額に25%を上乗せして提示していると主張しているが、理解は得られていない状況だ。
住民のなかには金額にこだわるわけではなく、純粋に先祖代々の土地を手放したくないという人々もいる。フォーリン・ポリシー誌は、住み慣れた家を追われようとしている住民の事例を紹介している。一部部族のなかには、コミュニティに帰属する土地を重要視する文化もあるようだ。ある村では住民たちが測量技師を追い払うなどのケースも出ているという。
ナレンドラ・モディ首相はこれまで、環境規制の緩和や巨大なインフラ事業などで支持を集めてきた。しかし難航する高速鉄道事業を前に、インド総選挙への影響が懸念されている。
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