米中貿易戦争、世界経済に混乱を招く恐れ 激化すれば雇用・投資に悪影響

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 トランプ大統領はEUに対しても、輸入自動車に関税を課すと威嚇し、摩擦を起こしている。またカナダ、メキシコに対しては、北米自由貿易協定の修正を求めて揉めている。さらにトランプ大統領は、大半の貿易相手国を対象とし、鉄とアルミニウムに関税を課した。

 中国への輸出品に対する関税の影響を真っ先に受けたアメリカの農家などは、今後を懸念している。中国がアメリカ製品に関税を課したことで、アメリカの農家が生産する輸出用大豆の約60%を引き受けている中国との取引が断ち切られる恐れがあり、これを受け、アメリカ産の大豆価格は先月1ヶ月で13%急落した。

 インディアナ州ロムニーで大豆とトウモロコシを生産するブレント・バイブル氏は、「私のような大豆の生産者が、経済的な打撃を直接受けることになる」と言う。「関税は、畑で1年間働いて得られた収益と損失額との差分くらいになり得る。その時はすぐそこに迫っているだろう」

 蒸留酒評議会(Distilled Spirits Council)役員のクリスティーン・ロカシオ氏は、中国のアメリカ産ウイスキーへの関税により、アメリカ産蒸留酒の輸出量増という「アメリカン・サクセス・ストーリーに歯止めがかかる」ことを懸念していると言う。

 投資家らにとっては、最初の関税措置が発表される前から、米中貿易戦争の動向は心配の種だった。ダウ平均株価は6月11日以降、数百ポイント下落。しかし現在、市場はすでにそのリスクを織り込み、ダウ平均は6日に100ポイント近く上昇し、24,456.48となった。

 中国の通貨である元は先月以来、ドルに対して3.5%下落し、これにより中国企業が、価格の上ではアメリカ企業より優位に立った。銀行業界団体の国際金融協会が発表したレポートによると、元の下落については、中国政府が「貿易交渉の進め方に対する不満」を表明するため、意図的に通貨を引き下げた可能性がある。

 トランプ政権は、初回の関税措置で中国製の消費者製品ではなく工業製品を対象とすることで、アメリカの家計には大きな影響が及ばないようにした。

 しかしこの関税措置を実施することで、機械や部品を中国製品に頼っているアメリカ企業のコストは増える。そうすると、企業がコストの増加分を取引先や、最終的には消費者に負担させることにもなり得る。

Text by AP