米中貿易戦争、世界経済に混乱を招く恐れ 激化すれば雇用・投資に悪影響
今月6日、米中間で勃発した貿易戦争は、今後激化する恐れが十分にあり、そうなれば投資の減少、消費の落ち込み、金融市場の不安定化、世界経済の停滞といった影響を及ぼす可能性がある。
最初の攻撃が放たれたのは、日付が変わってすぐのことだ。トランプ政権は、中国からの輸入品340億ドルに25%の関税を課すと発表。これに対し中国政府は、同額のアメリカ製品に報復関税を発動した。中国側は、「経済史上最大の貿易戦争」を引き起こしたとして、アメリカを非難している。
この応酬の結果、アメリカの企業が建設機器などの機械を始めとする中国製品を購入する際の負担が増え、最終的には消費者の負担も増える可能性がある。さらにアメリカ産の大豆、豚肉、ウイスキーを輸出する業者は、中国における競争力を失う恐れがある。
貿易戦争の第1回戦とも言えるこの関税措置の応酬が、2大経済大国に深刻な影響を及ぼす可能性は低い。オックスフォード・エコノミクスでアメリカ経済研究長を務めるグレゴリー・ダコ氏の計算によると、これによる2020年までの両国における経済成長の低下は、0.2%未満にとどまることが予測される。
しかし米中の対立関係は、すぐにも激化する恐れがある。ドナルド・トランプ大統領は、この貿易戦争に容易く勝利できると自負しており、最大で、5,550億ドルの輸入品に関税を課す用意ができていると発言した。これは昨年の対中国輸入額の合計、5,060億ドルを超える額である。
このまま関税を上げ続けると、企業は、トランプ政権が中国と休戦できるかどうか見極めるまで投資活動を控えるため、企業投資が停滞する可能性がある。また、先の見通しが鮮明になるまでは、雇用を見送るという経営者もいるだろう。このような損失により、昨年の税率引き下げで得られた経済効果が弱まる恐れが出てくる。
サン・ライフ・インベストメント・マネジメントのデック・ムラーキー投資戦略担当専務取締役は、「貿易の混乱は、世界経済の成長にとって最大の脅威だ」と言う。「景況感の悪化や投資の先延ばしなど、直接的に幅広い影響を及ぼすだろう。市場は今も、両国の再交渉を望んでいる」
貿易戦争の根源には、中国が略奪的なやり方でアメリカの優れた技術を奪おうとしてきたというトランプ政権の主張がある。略奪的なやり方というのは、ハッキングや、中国市場へのアクセスと引き換えに技術を提供するよう企業に迫る脅迫行為などを指す。トランプ大統領の関税措置は、中国にそのような手法を改めるよう圧力をかけるためのものだ。今回生じた中国との対立は、トランプ政権がこれまでに引き起こしてきた貿易戦争の中でも最大規模だ。