超富裕層が進める巨大な地階開発は、昨今、ロンドン都市部の分かりやすい象徴となった

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著:Roger Burrowsニューカッスル大学、Professor of Cities)

 ワールドウェルスリポートによると、2008年には、100万ドル以上の投資可能資産を有する「個人富裕層」は世界中に860万人いると推定されていた。しかし、2016年には92%の増加を示し、1,650万人を記録した。この富裕層人口の地理的分布は、極端なほど一部の地域に集中している。アメリカに479万5千人、日本に289万1千人、ドイツに128万人、中国に112万9千人、フランスに57万9千人、そしてイギリスに56万8千人(2008年には36万2千人)となっている。イギリスではこれらの富裕層のうち、およそ50万人がロンドン市街の中心や近郊のごく限られたエリアに在住している。

 ロンドンに集まったこの有り余る富は、数えきれないほどの影響を建設環境に与えた。おそらく、もっとも顕著なのは、次々と登場している多数の「超高層」で「超高級」な居住用のタワーだろう。エリートの領分ともいうべき垂直型都市住宅の急増である。

                                                                                                                 

 しかし、ロンドンの青空の景観を変えるに至らなかった富も、やはり既存の建築環境に大きな影響を与えた。新たに大富豪の仲間入りをした人々が古い物件を「最先端の」居住空間に作り変えようとして頻繁に構造変更を荒々しく進めているため、数多くの高級住宅が大幅に改築されている。プライバシーとセキュリティの懸念に対して様々なデザインが採用され、技術的な「解決策」が講じられるようになったのと同様に、今や、すべての室内空間を最大化し、外からの光を取り入れることは絶対的な条件となった。

 しかし、「超富裕層」のエリートたちにとって魅力的なロンドンの「超高級」地区の多くでは、改築に伴う制約や元々の物件の性質上、建物を横方向に拡張したり、物件の上層に新たな階を増築したりすることが非常に困難なことがしばしばある。そこで、地下深く掘り進めることが唯一の「解決策」となる場合がある。

 その結果、近年では、ロンドンの最も裕福な地域で住宅用の地階開発が著しく増加している。ロンドンにおけるこの超富裕層向けの新たな地下方向への建設は、これまでしきりに話題には上っているものの、系統立てた調査は最近までほとんど実施されてこなかった。我々の新しい調査は、そのような開発が変わりゆくロンドンを象徴している様を示唆している。我々は、居住用の豪華な高層タワー(「豪華な高層空間生活」)が街中に林立し始めるとともに、これと対照的な「豪華な穴居生活」の流行も目の当たりにしている。超富裕世帯は、自らの所有地を深く掘削することで自分たちの住居を地下方向へ拡張し始めているのだ。

◆地下深く掘り進む
 この現象を調査するため、我々は、開発計画ポータルから、ロンドンにあるカムデン自治区、ハマースミス・アンド・フラム区、ハリンゲイ区、イズリントン区、ケンジントン・アンド・チェルシー区、ワンズワース区、そしてウェストミンスター地区の7区における2008年から2017年末までの建設計画データを抽出した。これらの地域は、ロンドンの「超高級」住宅街の中枢を網羅している。我々は、4,650件の地階建設計画に許可が下りていることを突き止めた。

 地階建設計画件数はハマースミス・アンド・フラム区が最も多かった。10年間で1,147件以上である。そして、ケンジントン・アンド・チェルシー区が1,022件で2番手に続き、次いでウェストミンスター地区の678件となっている。大部分(80.7%)は「標準的な」地下1階分の掘削工事に分類できるが、16.9%(785件)は「大がかりな」地下2階を建築するための深さ(もしくはこれと同等の掘削土砂量)の掘削工事であり、2.4%(112件)は地下3階またはそれ以上の地階を建築するための深さ(もしくはこれと同等の掘削土砂量)に匹敵する、もはや「メガクラス」地下掘削工事としか形容のしようがない地階建設計画だ。

 ここで、我々の関心の対象を絞り、大がかりな785件とメガクラスの112件の地階建設計画に焦点を当てる。これらおよそ900件の掘削は標準的な建設に比べて異なる規模で実施されている。総計すると、367の遊泳プール、358のトレーニングジム、178の映画上映スペースと63のスタッフ居室の建設が含まれている。また、我々は、14の車用リフト、7つのアートギャラリー、2つの銃器格納庫が建築予定であることも確認し、さらに、緊急避難用の「パニック・ルーム」を作る予定だ、と明かした住居オーナーもいた。

 これら地階建造物は、建設するのに何年もの歳月を要する場合があり、その間の工事による周囲への迷惑や環境への悪影響が懸念されている。おそらく、我々が発見した最も「豪華な」地階開発は、2013年にホランドパークにて建設許可が下りた大きなセミデタッチトハウスであろう。この計画では、物件全体と裏庭の一部にまたがる土地の下に地下3階分が新築された。この建設には、スタッフ用キッチン、スタッフの寝室、6つのトイレ、トレーニングジム、メディアルーム、ファミリールーム、ファミリーキッチン、ゲスト用寝室、ゲスト用キッチン、洗濯室、乾燥室、サウナ、蒸し風呂、2つのシャワールーム、ジャクジー、飛び込み台のある小さくて深いプール、食器室、フルサイズのスイミングプール、そして、ビーチが含まれる。そう。ビーチだ。

 この地階開発における「水回り関連」の設備は、イギリスの平均的な新築物件が必要とする広さとほぼ同等の規模だった。一部の超富裕層は、一般人にとっては家庭で行うすべての活動を行うに十分な広さを使って、地下で水泳や入浴を楽しみ、蒸し風呂で汗を流そうとする。

 これらのことすべては、より大規模な地下掘削の件数が過去10年間に大幅に増加したことを示している。ロンドンで広く行われるようになったこのような地階開発は、2008年の金融危機以降の建築環境における広範な変化の重要な一要素である。ロンドンの人たちが慣れ親しんでいる「豪華な高層空間生活」は、エリートたちの威力をはっきりと目に見える形で具現化した象徴だ。しかし同時に、全体としてザ・シャード50棟分の階数に相当するこれらの豪華な地階建設も、今日のロンドンという都市を構成する重要な一面なのだ。

 超富裕層はロンドンに大きな影響を与え続けている。ただもはやそれほど顕著ではないだけのことだ。巨万の富は、天空に高く築かれるだけではなく、地下に深く掘り進んでいるのだ。

This article was originally published on The Conversation. Read the original article.
Translated by ka28310 via Conyac

The Conversation

Text by The Conversation

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