誰が摘む? 危機に瀕する英国産イチゴ 遅れたブレグジット対応

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 イギリスではこれから夏のフルーツの収穫シーズンとなり、ソフト・フルーツ(硬い皮や大きな種のない果物)が出回る時期だ。なかでも人気はイチゴだが、近年その収穫のためにやってくる欧州大陸からの労働者の数が著しく減少している。ブレグジットの影響と見られており、移民に頼り切ってきた業界は頭を悩ませている。

◆愛すべき国産フルーツ、イチゴの摘み手が消える
 フィナンシャル・タイムズ紙(FT)は、イチゴは外国産と競争できる数少ない作物だと述べる。YouGovが行なった調査では、イギリスの消費者の42%がシーズン中少なくとも週1回は国産イチゴを買っているという結果が出ており、ウィンブルドンテニスと並ぶ夏の風物詩ということだ。

                                                                                                                 

 しかし、イチゴ農家を困らせているのが人手不足。ベリー類の生産者団体「ブリティッシュ・サマーフルーツ」に属する生産者の3分の2が求人応募の落ち込みを報告している。

 イギリスでは年間9万人の外国人季節労働者が農作物の収穫作業に従事しているが、近年その数は減っている。農場で働く季節労働者の99%は東ヨーロッパ出身者で、そのうち3分の2がルーマニアとブルガリアから来ているとされる。今年の人手不足も深刻で、すでに5月だけで1500人分の職が埋まっておらず、全国農業者組合(NFU)は、収穫の最盛期には労働者不足は30%に達するだろうとしている(iNews)。

◆移民はより稼げる国へシフト 高給でもイギリス人はパス
 イギリス各地の農園でイチゴを摘んでいるのも、ルーマニアなどから来た季節労働者だ。ブレグジットで先行きが不透明なこともあるが、英ポンドが弱くなったことが、人が集まらない最大の理由だとiNewsは指摘する。ブルガリア人やルーマニア人にとっては、ドイツへ行く方が経済的道理にかなうということらしい。

 BBCは、季節労働者の出身地の経済が好調なことも人手不足の理由として上げている。かつて最貧国だったルーマニアの経済成長率は6.9%で、イギリスを上回る好調さだ。豊かなミドルクラスも出現しており、イチゴを摘むよりいい仕事が増えたのかもしれない。

 イチゴ摘みの作業は昔より楽になったとはいえ、暑いビニール張りの温室での作業になることもある。また基本もくもくとイチゴを摘むだけであるため、孤独な仕事だとiNewsは述べ、その大変さを指摘する。時給は14ポンド(約2000円)になる場合もあり、福利厚生まで付ける雇用者もいるが、NFUのデータでは、イギリス人でイチゴ摘みに従事しているのはわずか300人ほどと見られている。

 労働トレンドを研究するエクセター大学のキャロライン・ナイ氏は、イギリス人が果物摘みをしたがらない理由として、失業率の低さに加え、農村部への通勤が難しいこと、季節労働をすることで生活保護が削られることなどを上げている。さらにこれらの問題が解決されたとしても、仕事自体が恥ずかしいものと捉えられているため、イチゴ摘みをしようとするイギリス人は増えないだろうとしている(iNews)。

◆予測できた人手不足 対策の遅い政府
 イギリスでは、以前は外国人季節農業雇用制度(SAWS)のもと、ベラルーシ、ウクライナ、ロシアなどから労働者を入れていたが、2013年よりEU以外からの季節労働者受け入れが禁止されている。NFUのアリ・キャッパー氏は、人手不足になることは初めから分かっていたと現制度を批判。イギリス以外の欧州では、ウクライナ人やネパール人までが果物摘みをしていると述べ、SAWSの復活を求めている(iNews)。

 FTは、ブレグジットに際し、政府はそれぞれの産業の優先事項が何であるか決めることを全くほったらかしにしているとし、果物業界が必要なのは季節労働者の確保であり、SAWS復活は農業関係者共通の願いだと断じる。復活に異論は少ないのに、ブレグジット交渉同様、問題解決へのアクションは立ち往生しているようだとし、政府の動きの鈍さを問題視している。

Text by 山川 真智子

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