トランプ氏激怒も、自ら招いたハーレーの生産国外移転 米メディアも呆れ気味
◆海外生産は企業なら当然 関税は逆効果
トランプ氏はハーレー社の海外移転を責めるが、すでに同社はブラジルとインドに組立工場を持っている。ヤフー・ファイナンスは、落ち込むアメリカの需要を海外で補うという戦略は、今に始まったことではないと指摘している。ロサンゼルス・タイムズ紙(LAT)は、ハーレー社の二輪車の40%は海外向けであることを指摘し、グローバル企業にとって、生産ラインを海外の顧客のより近くに持つことは珍しくもないと述べている。
EUからハーレー社の二輪車に課せられる関税は6%から31%となり、製品価格を約2200ドル(約24万円)押し上げることになる。ロイターによれば、EUの追加関税により、ハーレー社のコストは年間9000万ドル(約99億円)から1億ドル(約110億円)増加すると見られている。
そうなれば消費者にコストは転嫁される。そこで同社は新たな関税の費用負担を避けるため、EU向け製品の生産を海外シフトするという、戦略の再設定を選んだ。結局のところ、雇用を失うアメリカの労働者とアメリカ経済が敗者となり、ハーレー社とEUの消費者が勝者となるとヤフー・ファイナンスは述べている。商品に課税することは、工場移転のインセンティブを企業に与えるだけだとし、グローバル化した今、関税で自国を守る古いやり方に疑問を呈している。
◆メディアもげんなり 気分屋トランプ氏
トランプ氏は2016年の大統領選の選挙運動で、「Bikers for Trump(トランプ氏のためのバイク乗り)」というグループの支援を受けていた。大統領就任後はハーレー社の代表をホワイトハウスに招き、「メイド・イン・アメリカ」のお手本として同社は厚遇されたが、一転して攻撃の対象にされてしまった。
ヤフー・ファイナンスは、政権の経済アジェンダに協力してくれるものと思っていたハーレー社が、報復関税がもとで海外移転すると明言したことが、トランプ氏には気に入らなかったのではないかとしている。これまでもアマゾンやボーイングといった企業も攻撃を受けており、ハーレー社も様々な理由でターゲットにされた企業の一つにすぎないともいえる。
LATは、アメリカ企業だからトランプ氏の貿易戦争に巻き込まれなければならない理由はないとする。他国の企業同様、自社を守る手段を取ったまでで、ハーレー社を脅すようなトランプ氏の態度にすっかり呆れ顔のようだ。
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