あなたのSpotify履歴が経済を見通すヒントに

Casimiro PT / Shutterstock.com

著:Kim Kaivantoランカスター大学、Lecturer in Economics)、Peng Zhang
貴州民族大学、Lecturer in Economics and Finance)

 イングランド銀行のチーフエコノミストであるアンディ・ホールデン氏は同僚に対して、銀行金利の変更について考慮する際には国の音楽的ムードを調査するように促したテイラースイフトのダウンロード数やロックンロールの人気の低下が経済の管理といったいどのように結びつくのだろうか。

 これは結局のところ景況感を測定することに繋がる。人々が経済についてどう感じているかを推し量る方法なのである。これは行動経済学者が異なる政策に対する人々の反応を予測する際に使用している方法と同じである。例えば、人々が全体的に経済に対して悲観的であるならば、金利を引き上げることで彼らが多額の借金や浪費をして経済に悪影響を与えることを止める助けとなるかもしれない。

 長い間、研究者らはオンラインのニュース記事Twitterの投稿に使われている言葉を分析することで景況感を測定してきた。しかし最近になり、クレアモント大学院大学の研究者らがポップミュージックのトップ100リストやSpotifyなどの音楽プラットフォームからも景況感を抽出することができる可能性を示した。さらに、これらの新しい景況感の指標は少なくとも消費者信頼感に対する従来型の調査と同等に取り扱うことができるのだ。

                                                                                                                 

 考え方としては、曲には誰もが共感することができる感情的要素があり、それらは曲のエネルギーやテンポ、音量などの音楽的属性にエンコードされているというものになる。Spotifyなどのオンライン音楽サービスは既にこれらの属性を利用して曲をカテゴリ化し、ユーザーが聴いたことのあるトラックに基づいて新しい音楽を薦めている。

 文化的背景によっては、曲によって表現されている感情を歌詞から読み解くこともできる。これらの歌詞は、ニュースやTwitterのフィードを評価する際に使用されるものと同じ「自然言語処理」ソフトウェアを用いて分析することができる。

 これらは、シンプルに言葉のポジティブまたはネガティブな感情的意味合いをエンコードすることで、より厳密に言えば、言葉を8つのコア感情(楽しみ、悲しみ、怒り、恐れ、むかつき、驚き、信頼、期待)とマッチさせることで、実現することができる。それからソフトウェアが曲の歌詞の中でそれぞれの感情が出現した数を数えるのだ。

 最も人気な曲の感情要素を特定することにより、研究者らはリスナー自身の感情を紐解き、それを用いて景況感を予測することができる。感情マッピングのエクササイズをトップ100チャートの全曲に対して実行することにより、購入され、聴かれている新しい音楽の大部分を月ごとにキャプチャすることが可能になる。

 ここで大勢の人々からの「ビッグデータ」を活用することの利点が現れる。アンケート結果には、協力することを選択した人々が知らせたい事柄しか反映されないのに対し、ミュージックチャートはより広範な消費者グループによる実際の選択を反映しているのだ。

◆感情的下降
 クレアモントの研究者らは、2008年の世界恐慌の前後からのチャートにこの技術を適用した。調査により、世界恐慌の後では怒りやむかつきに関連する言葉の頻度が高くなり、信頼に関連する言葉の頻度が低くなっていることが分かった。この種の証拠は、音楽消費者の精神状態と彼らが購入して耳を傾ける音楽の関連性を強く示している。

 この調査とアンディ・ホールデン氏のコメントは、音楽と人気曲の歌詞が両方とも確かに景況感を、さらには短期株式市場の動向を推し量るために使用することができることを強く示している。SpotifyやApple Musicのようなストリーミング・サービスが保有するデータは、トップ100リストとは比較にならない程の景況感の詳細マップを構築する助けとなる。これらの会社は世帯ごとのデータを保有していることから、異なる地域や集団(例えば、異なる収入層)ごとに景況感指数を作成することができる。

 エコノミストに国の音楽的ムードを調査するように呼び掛けることは幾分驚きであり、奇怪ですらある。しかし、消費者心理の追跡にビッグデータ・アプローチを適用することが有益であることが調査によって示されている。これはイングランド銀行がその分析と決断において活用する情報源の拡大と多様化を図る取り組みのほんの一面であり、大いに歓迎すべき事柄である。

This article was originally published on The Conversation. Read the original articleThe Conversation

Text by The Conversation

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