アフリカのシリコンバレー最前線 拡大する投資 社会問題解決への期待も

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 アフリカ大陸において、近年テクノロジーやフィンテックなどのベンチャー企業の成長が著しい。ニュースサイト『クオーツ』(アフリカ版)によると2017年にはアフリカベンチャー企業への投資が5.6億ドル(約620億円)に達した 。日本国内のベンチャー投資額(1,092億円)などと比べるといまだ小規模だが、前年に比べて53%増と急成長を遂げている。

 アフリカ諸国の中でも南アフリカ、ケニア、ナイジェリアのベンチャー企業への投資が顕著である。南アフリカは2017年の対アフリカベンチャー企業投資額の30%を占めており、アフリカスタートアップのリーダー的存在と言える。

                                                                                                                 

◆起業家のサポートとネットワーク作り
 Startup Blinkが行った世界125ヶ国を対象としたスタートアップのエコシステムランキングによると、南アフリカが38位、ケニアが53位、エジプトが54位、ナイジェリアが57位だった。このランキングは各国のベンチャー企業支援を測り、トップは米国、その後は英国、カナダが続く。日本は20位だった。

 南アフリカでは従来ケープタウンがベンチャー企業のハブとして知られている。ケープタウンにはシリコンバレーに因んだ「シリンコンケープ」というベンチャー企業のエコシステム活性化を担う団体もある。2009年に設立されたシリコンケープは、南アフリカのベンチャー企業、起業家、そして投資家のサポートを担う重要な役割を担ってきた。

 シリコンケープによると、南アフリカ国内には約20の起業家アクセラレーター・プログラムがある。オンラインニュース『Ventureburn』によると、2017年には約2,100人の起業家が19のプログラムに参加し、約1,700万ドル(約19億円)の出資を受けたという。

◆人口の急成長と雇用創出のポテンシャル
 起業家サポートの増加には、ベンチャー企業に対する期待も背景にある。

 日本とは対照的に人口の増加が進むアフリカ大陸においては、世界的に見ても急成長を遂げている都市が多く見られる。これは個人消費の増加やインターネットなどの新技術の導入などから見ると、大きなビジネスチャンスに繋がる可能性がある。アフリカのベンチャー企業もテクノロジー企業が多く、Leapfrog(新興国が先進国から遅れて新しい技術に追いつく際に、途中の段階をすべて飛び越して一気に最先端の技術に到達してしまうこと)が期待されている。

 同時に多くのアフリカ諸国は深刻な雇用問題を抱えている。若年層の失業問題が特に大きな問題だ。アフリカ大陸の中では経済大国である南アフリカでさえ失業率は26.7%(2018年第1四半期)と極めて高い。

 そんな中で、アフリカにおける中小企業の経済的役割は非常に大きい。南アフリカ銀行協会によると、南アフリカ国内の登記されている企業の91%が中小企業であり、正規雇用の60%を創出、GDPへの寄与度も31%と高い。そこでベンチャー企業による新たな仕事の創出と経済の活性化が期待されている。

 昨年シリーズC投資で4,000万ドル(約44億円)を調達したテクノロジー企業アンデラはまさにアフリカの雇用問題解決をビジネスモデルとしている。同社はフェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOと妻プリシラ・チャン氏が2015年に立ち上げたチャン・ザッカーバーグ・イニシアチブが初めて投資をした企業としても知られている。

 アンデラはテクノロジーを使って有望なソフトウェアエンジニアの職業訓練をナイジェリア、ケニア、ウガンダで行っている。 まさに先進国におけるIT技術者不足のニーズをアフリカのエンジニアで埋めることによって、雇用の創出に貢献しているのだ。2014年の立ち上げから現在までアンデラの職業訓練を受けた若いプログラマーたちは約2万人に及ぶ。2024年までに10万人のアフリカ人ソフトウェアエンジニアを訓練するのが目標だ。

◆社会への貢献
  テクノロジー企業が急成長する中、アフリカのベンチャー企業の中には教育、農業、エネルギーなど、本来政府が支援すべきものの十分になされていない業界への進出も進んでいる。特に新しいテクノロジーを使ったエドテック、アグリテック、クリーンテックなどのベンチャー企業が注目を浴びている。

 今年4月にはケープタウンのVCであるKnife Capitalがエドテックベンチャー企業のSkillUp Tutorsに出資したことがニュースになった。SkillUp Tutorはインターネットやアプリを使って中・高・大学生に家庭教師を派遣するサービスを行っている。

 また営利目的であっても社会的な問題を解決することがビジネスにつながっていることも多い。

 ザンビアのフィンテック企業Zoonaのビジネスモデルは「コミュニティーの繁栄のために必要な金融サービス」であり、最新のテクノロジーを使ってアフリカにおける安全な送金の手助けをしている。

 Zoonaは世界銀行の国際金融公社(IFC)などからの出資を受け、ザンビア以外にもマラウイとモザンビークに進出している。2020年までにアフリカ10市場に進出し、3,000万人以上のユーザーの利用を目指している。

 アフリカのベンチャー企業が経済および社会に貢献する可能性は高い。これから一層成長すると思われるアフリカベンチャー企業の将来に期待したい。

Text by 中川沙和

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