「安全な」大麻商品がスイスでブームに スーパーも参戦で競争激化

Satomi Iwasawa

◆ブームによる利益は66億円
 スイスの主要一般紙ターゲス・アンツァイガーによれば、2017年1月は、CBD商品を製造したり売ったりする企業はたった5社だったが、年末ごろには410社が登録していた。1年で80倍以上増え、まさに一大ブームだ。

 ブームによる経済効果は大きい。同年のCBD商品による予測利益は66億円にも上り、このうち4分の1の16億円以上が政府の収入となったという。タバコ類似品として、喫煙用の葉に課税したためだ。スイス初のCBDの店がオープンしたのは2016年8月で、政府は2016年にCBD商品でほとんど収入がなかったから、CBD大麻はまさに「金のなる葉」といえる。

◆用途は2つ 喫煙のため、健康のため
 CBD商品を購入する目的は人によって異なるが、調査専門家のフランク・ツォベル氏は4つにグループ化している。①単なる興味から、②喫煙のため、③生活の質を向上させようと考えて、④持病に使うため。多くの専門家は、③と④の健康に強い関心のある人たちの伸びが最も大きいと考えている。

 この背景には、病気の苦しみや痛みを和らげるために、違法大麻(麻薬)を入手して消費している人がとても多いことがあるのだろう。2017年4月のスイス公共放送の記事(映像入り)では、連邦健康局麻薬部のマルクス・ヤン氏が次のように語っている。

「私たちは具体的なデータを取っていませんが、カナダのある研究で、スイスでは10万人が医療目的で違法大麻を消費していることがわかっています。病気が重くても軽くても、大麻の種類も、本当に自分に合っているかも全然知らずに、質がコントロールされていない違法大麻を摂取しています。公共衛生の観点からは、よい状況ではありません」

 CBD商品のブームは、治療のためにTHCをより多く含む大麻を合法化してほしい人たちにとっては、一歩前進と映っているかもしれない。1月初めのフリーペーパー『20 ミヌーテン』のオンラインアンケートでは、「違法大麻を合法化すべきだと思いますか」という質問に、「はい(いまがその時だから/国民が合法化に投票できるようにすべきだから」と回答した人は80%、「いいえ(麻薬は違法のままがいいから/社会にとって危険すぎるから)は17%、「どちらでもよい」が3%だった(回答者は2万9700人を超える。アンケートは、まだ締め切っていない)。

 ②の喫煙目的は、CBD大麻の風味が麻薬大麻とあまり変わらないためだ。ちなみに違法大麻の喫煙に関しては、10代の喫煙の多さが指摘されている。スイスでは15歳の男子の3人に1人、女子の5人に1人が1回は違法大麻を吸ったことがあり、国際比較すると世界一多い。


Satomi Iwasawa

◆スーパー参戦で、閉店に追い込まれる店も
 CBD商品は、最近は大手スーパーチェーンでも喫煙用を中心に販売されるようになったため、店同士の競争が激しくなった。

 大麻は一旦病気にかかると、すぐに広まる。また、THCの量が突然1%より上がってしまうことがあり、それらの葉は市場に出せず、すべて処分しなくてはならない。ブームに便乗して趣味的に開いた店だと、質の良い商品を提供できずに客が遠のき、閉店しているそうだ。

Text by 岩澤 里美