日本が米国車を不当検査? トランプ“ジョーク”に米メディア反論「売れないのは……」

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◆日本独特の過剰サービス
 トランプ大統領の「ジョーク」の背後には、日本人の米国車のイメージに対する苛立ちがあるのは確かだろう。米自動車業界紙『オートモーティブ・ニュース』の日本在住の記者、ハンス・グリーメル氏は、日本では、米国車は「部品のかみ合わせと仕上げが悪く、燃料を食い、大きすぎる」というイメージを持たれていると指摘。ただ、今のアメリカ車が実際そうであるわけではなく、「時代遅れの認識」だと同氏は主張する。

 国産車ディーラーの日本独特の“過剰サービス”と顧客との親密な関係も、「国産主義」を大きく後押ししていると見られている。アトランティック誌は、早稲田大学の浦田秀次郎教授(経済学)に取材し、同教授の次のような新車購入エピソードを紹介している。「浦田氏が前回、新車購入を検討していた時のことだ。絶妙なタイミングで彼の電話が鳴った。地元のトヨタのディーラーからで、新車のご用命はないですか?と聞いてきた。彼が肯定的な反応を示すと、1時間後にそのディーラーと同僚が、2台の試乗車と共に浦田家の玄関先に現われた。浦田夫妻は近所を試乗車で周り、そのディーラーから車を買うことを決めた。ディーラーは、自動車保険の手配もし、保険契約の更新が必要な時にはいつでも家にやってきた。浦田夫妻は、数週間に1回、無料の洗車のためにディーラーにやってきて、従業員たちとおしゃべりをし、やがて犬の繁殖や家族の誕生日を通じて友人になった」

 上記のようなディーラーと顧客の親密な関係は日本では珍しくなく、浦田氏のように家族ぐるみで長年トヨタ一筋といったユーザーも少なくない。一方、アメリカでは、車が欲しくなれば自発的にディーラーを訪れるのが普通で、納車や点検、保険の手配でも客が主体的に動かなければならない。米国車のディーラーは、日本でも基本的にアメリカ式を貫いており、日本の消費者に合わす投資と努力をしていないことが販売不振の大きな要因だと同誌は指摘する。

◆日本仕様に合わせたブランドは好調
 全ての輸入車が苦戦しているわけではなく、近年は輸入車全体の新車販売台数は伸び続けている。特に伸びているのはドイツ勢だ。日本の道路事情にマッチした小型車が中心のフォルクス・ワーゲンのみならず、メルセデス・ベンツ、BMWなどの高級車もよく売れている。アトランティック誌の取材に答えたBMWジャパンのペーター・クロンシュナーブルCEOは、同社では3年前から日本市場に合わせた大改革を行っていると明かしている。

 BMWは、販売店の拡大や大規模改装、サービスの向上に多額の資金を投入。これまでのように売り急ぐことをやめ、国産車ディーラーのように一般消費者との信頼関係構築を最優先する意識改革を徹底した。新規オープンの販売店には誰でも利用できるカフェやグッズショップを併設。これまでやってこなかった週末の子供向けのイベントや、納車時のセレモニーなども行っている。クロンシュナーブルCEOは「日本では、ホスピタリティが全てなのです。もし、それに取り組まなければ、日本市場で成功するのは非常に難しいでしょう」と述べている。

 米国車の中にも、好調を維持しているブランドがある。フィアット・クライスラーの『Jeep』だ。日本では、戦後の進駐軍の「ジープ」のイメージが強く、オフロード車一般を「ジープ」と呼ぶほどブランドイメージが浸透していたのも大きな要因だろう。ただ、今実際にJeepを買っているのは、そのイメージが希薄な若い世代が多い。Jeepは、全ての車種を右ハンドル仕様で販売、小型モデルを打ち出す、販売店を清潔で高級感のあるモダンな作りに改装するなど、BMW同様に日本市場に合わせる努力をしている。その点がやはり、『オートモーティブ・ニュース』などで好調の要因として挙げられている。どれだけ車もディーラーも日本仕様になれるか。それが、日本市場で成功するカギだと言えそうだ。

Text by 内村 浩介