民泊新法、東京5ツ星ホテルに大きな影響なし 東京のホテル市場動向
不動産サービス会社のJLLが、調査レポート「ジャパン プロパティ ダイジェスト(JPPD)2017年第4四半期」を発表した。このレポートの中で、東京のホテル市場に関する分析がなされており、今後12ヶ月間は好調なパフォーマンスが続くことが見込まれるという。
◆東京のホテル需要:インバウンド客の貢献により宿泊需要の基盤は引き続き堅固
東京都の延べ宿泊者数は、2017年初来10月の累計で4億4976万人であった。都内延べ宿泊者数の35%を占める外国人宿泊者数は、対前年比16%増の1億5623万人、日本人宿泊者数は対前年比2%増の2億9352万人であった。
2017年1月-10月の訪日外国人客数は対前年比18.3%増の2379万人を記録したが、都内の外国人宿泊者数は同ペースでは増加していない。都心のホテルの客室単価が上がり過ぎた結果、より安価な宿泊先を求めて周辺都市に需要が流れたことや、民泊の利用が増加していることが背景にあると本レポートは分析している。
◆東京のホテル供給:4ツ星及び5ツ星ホテルの新規供給は無し
2017年第4四半期はラグジュアリーホテルの新規供給は無かった。中価格帯のライフスタイル型ホテルとして11月に開業した「モクシー東京錦糸町」が注目を集めた。
なお、東京オリンピックが開催される2020年に向けて、複数のラグジュアリーホテルの新規供給が予定されている。代表的な新規供給計画としては2019年に再開発完成予定の「ホテルオークラ」や2020年開業予定の「フォーシーズンズ大手町」が挙げられる。
◆東京のホテル運営パフォーマンス:ADR・客室稼働率の改善がRevPAR成長に貢献
東京の5ツ星ホテルの運営パフォーマンスは、1日当り販売可能客室数当り宿泊売上(RevPAR)が2017年初来11月までの累計で前年比5.8%の増加となった。客室稼働率が前年比2.8%、平均客室単価(ADR)が前年比2.9%上昇したことによる。
◆12ヵ月見通し:好調なパフォーマンスが続く見込み
違法民泊を取り締まる住宅宿泊事業法(民泊新法)が2018年6月に施行される。東京の5ツ星ホテルマーケットに対する大きな影響は見込まれず、パフォーマンスは引き続きADRが牽引し、RevPARの成長が期待される。今後12ヵ月間のホテル投資マーケットに関しては、オーナーおよび投資家における価格の期待値のギャップが狭まることで、売買件数が増加するものと予想される。
JLL 取締役 執行役員 ホテルズ&ホスピタリティ事業部長 沢柳知彦氏は、次のように述べている。
「東京ではビジネスホテルから5ツ星ホテルまでグレードを問わず、80%を超える高い客室稼働率が維持されており、依然として宿泊需要が旺盛であることが伺えます。一方で、ここ数年で客室単価が急上昇した結果、国内ビジネス客や、低予算の外国人レジャー客に対する客室単価の更なる向上は期待しにくく、これまでのような急激な成長ペースは考えづらいと思われます。ホテル投資マーケットでは売主の売却希望価格が高く、売買が成立しにくい状況が続いていましたが、2018年は売主と買主の価格目線が近づき、売買件数が増加に転じると見込まれます」