英、日本企業引き止めも 駐英大使「利益出なければ去る」 不透明なブレグジット後

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◆日本はソフト・ブレグジット希望。決定の遅さにイライラ
 FTによれば、日本政府はメイ首相に対し、イギリスが単一市場で持つほとんどの権利を離脱後も維持できるようにEUと交渉するよう求めている。しかしクオーツ誌によれば、メイ首相と閣僚は、イギリスは単一市場に留まる必要はなく、世界の国々と自由貿易協定を結ぶことができると主張している。ラウンドテーブルでは、メイ首相は「産業戦略」やブレグジットによる「チャンスとチャレンジ」などについて述べたというが、企業やメディアの関心は、離脱後のEUとの関係にあったようだ。

 今後は離脱のための移行期間に入り、イギリスはこれまでとほぼ同様の単一市場へのアクセスをしばらく維持することができそうだ。しかしラウンドテーブルに参加した日系企業の代表者からは、移行期間を設けるのは良いが、それを口実に離脱後のビジネス環境のあり方についての決定を遅らせてもらっては困る、という厳しい意見も出たという。このような明確な方針を知りたいという要望もあってか、できる限り関税なし、摩擦なしのEUとの貿易関係を確実なものとするために、早急に交渉に入ることの重要さが参加者の間で確認された。(FT)。

◆それでも日英は一枚岩?フランスは牽制
 インデペンデント紙によれば、イギリスの閣内では長期の離脱プランについての話し合いがまとまらず分裂し、メイ首相が頭を悩ませているという報道もある。しかし、鶴岡大使は、英政府はしっかりと結束し、離脱に対応しようとしているという印象を受けたと述べている。

 またFTによれば、ラウンドテーブルに参加した企業側も、場の雰囲気は「ポジティブ」で、英閣僚たちは日本側の不安をなくすことに熱心で、聞く耳を持っていたと話している。鶴岡大使は、参加企業すべてが完全にイギリスにコミットしたままであることを明確にしたと述べており、信頼関係が維持されていることを示した。

 一方ブルームバーグによれば、先月末に来日したフランスのジャン=イヴ・ル・ドリアン外相は日本のビジネスリーダーたちと面会し、「EUでのイギリスのプレゼンスは終わった」として、日本企業はそれを認識すべきだと述べた。イギリス・EU関係を規定する規則は従来ほど好ましいものではなくなり、イギリスを特別扱いしないとも付け加えた。同氏は、フランスには日本企業をできるだけ歓迎してもらいたいと述べ、日本企業も自分の利益を考え、終わったイギリスとではなく、EUメンバーのフランスと取引をすればよいという趣旨の発言をしている。

Text by 山川 真智子