TPP11、3月に署名へ カナダの葛藤、NZの日本市場への期待

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 TPP参加11ヶ国は22日から2日間にわたり都内で首席交渉官会合を開催。チリで3月に署名を行うことで合意し、アメリカ脱退後のTPP(TPP11)実現への道筋がついた。参加国に経済利益をもたらすとおおむね歓迎されているが、土壇場まで強硬路線をとったカナダ国内には、現地産業への影響を懸念する声も根強い。

◆難産
 TPP実現までの道のりは長かった。ラジオ・ニュージーランドの記事では、構想から10年以上かかったと振り返る。2005年にニュージーランドなど4ヶ国間のみでスタートした経済連携協定は、2008年にアメリカが交渉入りしたことで規模を拡大する。しかし遅い段階で日本が参加したことで交渉が複雑化したほか、構想を牽引してきたアメリカが離脱するなどの紆余曲折があった。

                                                                                                                 

 米ブルームバーグでは、アメリカの離脱以降も参加各国が実現に奔走してきたと伝える。フランス語文化の保護などでカナダが強硬な態度を示すなど、実現が危ぶまれる場面もあった。しかし東京での今回の会合で折り合いがつき、カナダのトルドー首相も合意を「適切な取引」とするなど満足した模様だ。記事はTPP11が参加国と世界全体の利益に適うと見ている。関税を主軸とせず、知財保護や電子商取引の推進などを中心に据えていることから、新時代の貿易の円滑化が目的になっていると評価する。

◆悲喜こもごも
 合意に関し、各国の業界は異なった反応を示している。オーストラリアは概ね好感している模様だ。豪モナシュ大学で講師を務めるジョバンニ・ディ・リエト氏はカンバセーション誌に寄稿し、貿易分野でオーストラリアに900億豪ドルの経済利益をもたらすとの見解を示している。TPPの下では新規の2国間自由貿易協定の締結が容易になることに意義が大きいと氏は論じる。カナダ、メキシコとの協定を新規に締結するほか、日本など6ヶ国への市場アクセスをさらに自由化することで、牛肉、ラム、シーフードなどの輸入障壁を解消できるとの考えだ。一方TPPによる労働者の流入が懸念されたが、一時入国が許可される職種が非常に限定的となったため、合意による国内産業への悪影響は抑えられると見る。

 ラジオ・ニュージーランドによると、ニュージーランドも経済面での実益を見込む。特に日本市場へのワイン、牛肉、キウイフルーツの輸出増が期待される。ただし、閉鎖的なカナダの酪農市場へのアクセスの面では、ほとんど前進が見られなかったとしている。

 一方、カナダでは合意への批判が目立つ。グローブ・アンド・メール紙が指摘するのは、同国の酪農および自動車産業への影響だ。市場の閉鎖性を批判するニュージーランドに対し、カナダの酪農家らは雇用が奪われるのではと案じる。また、自動車業界もTPP11に反発し、北米自由貿易協定の再交渉中という状況で合意すべきでなかったと批判する。ベトナムやマレーシアなどからの低価格の部品の流入や、日本車の販売拡大が懸念事項となっている。一方、生産量の70%を輸出に向ける養豚業者らは市場アクセスの改善を歓迎するなど、同じカナダ国内でも明暗が分かれる形となった。

◆参加国拡大なるか
 現在11ヶ国が参加するTPPだが、将来的に拡大するとの観測も出ている。ブルームバーグは韓国、台湾、タイ、インドネシア、フィリピンが興味を示していると報じ、全て参加すれば5000億ドル規模になると指摘する。これはアメリカが参加していた当時を凌ぐ規模となる。さらに記事では、トランプ氏以降の政権でアメリカが協定に復帰する可能性も捨てきれないとしている。なお、アメリカの復帰に関してはラジオ・ニュージーランドも、トランプ政権以降にはあり得るとする見方を示している。

 ただし保護貿易主義に走る現政権が方針を転換することはないだろう。カンバセーションの記事はTPP11がアメリカへの一定の圧力となるとの見方を示しつつ、トランプ氏が方策を見直す可能性について「現状では、とてもありそうにないと思われる」としている。

Text by 青葉やまと

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