新幹線亀裂:品質偽装スキャンダルの影響疑う海外 「また近く何かあるのでは」
今月11日に新幹線「のぞみ」で亀裂が発見された問題で、海外各紙は日本の技術の信頼性を損ねる事態だと報じている。一部大手紙では、JR社内で進む設備の老朽化と若手技術者不足が原因だとし、あくまで社内の構造的問題に留まると見ている。一方で、日本の製造各社で相次ぐ品質偽装との関連を指摘するメディアも出ている。
◆あわや大惨事
ストレーツ・タイムズ紙では、N700系の問題となった車両について、2本の亀裂と発火の痕跡が確認されたと報じている。亀裂は側面14cmと底面16cmで、車体の台車部分に確認された。異常が起き停車する以前から乗務員は焦げた匂いに気づいていたという。JR西日本の吉江副社長はこの問題で謝罪し、異常があれば停止するという原則が徹底されていなかったことを認めた。
この件は重大であり、亀裂があと3センチ大きければ、台車は完全に裂けて分離していたという。JR西日本は高速運転中の脱線の恐れがあったことを認めており、大事故に至る可能性もあった。上述の記事でも異臭から運行停止までに3時間を要したとしており、対応の遅れを問題視している。なお、台車は川崎重工業製で、前夜の検査では異常は発見されなかったとのことだ。
◆社内問題? 社会問題?
原因について、ストレーツ・タイムズ紙は、あくまで社内の構造的問題が事故を招いたとの立場だ。石井国土交通相の会見を紹介し、新幹線設備の老朽化と若いエンジニア不足が原因だとする見方を伝える。また、日経・アジアン・レビュー誌の記事を引き、鉄道会社は人気の就職先であるものの、設備部門は辛い仕事だと考えられているため若手の確保に苦戦しているとも報じている。ベテラン社員の引退により、技術知識が失われてゆく問題もあるようだ。
一方、フィナンシャル・タイムズ紙(12月19日)では、複数の日本企業による品質問題が報じられた矢先の出来事であることを指摘し、これらと関連づける形で記事を展開している。
フォーブス誌(12月19日)では、サプライ・チェーン・マネジメントの専門家であるジョナサン・ウェッブ氏が、さらに踏み込んだ指摘をする。三菱マテリアル、東レ、神戸製鋼、スバルなどの不祥事が続いており、「上流生産企業の不祥事が、下流の運営会社に影響を及ぼし始めたように思える」と捉えているようだ。現時点で直接的な関連は明らかになっていないが、近い将来、さらに下流の複数の会社でインシデントが発生することも考えられるとする。
◆輝かしい評価に傷
原因がどうあれ、日本の技術に対する評価への悪影響は避けられそうにない。フィナンシャル・タイムズ紙は、日本の有力な政治家らが、「非の打ちどころのない高水準という日本の評判」に関して、深刻に憂慮していると伝える。
また、フォーブス誌によると、JR西の吉江氏は「極めて重大なインシデントです」「新幹線の安全性をめぐる信頼を裏切る事故です」との認識を表明している。記事では「新幹線は、ディテールへの執念を持った日本の精神を具現化している」とし、その運行の正確性は「ほとんどの他の鉄道会社の理解を超えたもの」だと讃える。相次ぐ品質問題を乗り越え、新幹線と日本の製造業は国際的な信頼を守れるだろうか。