なぜ日本企業の不祥事が頻発するのか、海外が分析 求められる企業統治の向上

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 現在進行中の神戸製鋼の検査データ改ざん問題をはじめ、このところ日本メーカーの品質管理やコンプライアンスを巡るスキャンダルが相次いでいる。東芝(粉飾決算)、タカタ(エアバッグの大量リコール)、日産(無資格検査)、トヨタ(欠陥隠し)など、日本経済を支えてきたビッグネームの不祥事が次々と報じられる中、海外メディアの多くが今、日本企業の構造的な問題を指摘している。

◆「メイド・イン・ジャパン」の神話は過去のもの?
 ロイターは、「メイド・イン・ジャパン」は高品質と信頼性の代名詞だったが、これが最近の一連のスキャンダルによって怪しくなってきたと指摘。BBC (電子版)も「日本株式会社に何が起きているのか?」と要因を分析している。

 かつて、日本メーカーは「Keiretsu(系列)」という独特の仕組みに支えられ、収益と品質を維持してきたとロイターは指摘する。しかし、「国内市場の縮小と国際競争の激化に苦しむ中、ケイレツに頼っていた製造業者は現代のコンプライアンス・スタンダードを満たせなくなった」と見る。系列企業間の取引は、仲間内の緊密さに基づいた信頼をベースにしているが、グローバル・スタンダードの市場原理や国際的な競争が広がる中で、日本メーカーは、もはや「ケイレツ」の殻に守られることはなく、「価格競争と顧客ベースを拡大することを強いられている」としている。

 系列システムの崩壊により、大手メーカーは部品を供給する子会社やサプライヤーへの投資を減らし、品質チェックにも時間を割かなくなったことが、品質管理体制の低下や不正の横行の要因だと、ロイターに答えた識者は指摘する。さらに、BBCは、1990年代に戦後日本経済の成長の勢いが弱まるとともに、日本企業はリストラ、コストカット、生産性の向上といったことに集中せざるを得なくなり、相対的に品質管理が甘くなったと指摘する。

◆「独立取締役」がコーポレート・ガバナンス向上の鍵か
 こうした一連の報道の中で、ブルームバーグ・ビューのコラムニスト、ノア・スミス氏は、今はピンチを逆手に、日本がコーポレート・ガバナンスを向上させるチャンスだと見ているようだ。神戸製鋼の検査データ改ざん事件は「日本製品の評判に大きなダメージを与えることは間違いないだろう」としながら、「日本メーカーにはより良いコーポレート・ガバナンスが必要だということを改めて認識させたのも確かだ」としている。

 コーポレートガバナンス(企業統治)とは、収益力向上と不正行為の防止を総合的に捉え、企業の価値を上げる経営の仕組みのこと。品質管理の徹底やコンプライアンスの向上を収益に結びつけるという考え方だと言っても良いかもしれない。アベノミクスでも、コーポレート・ガバナンスの向上が謳われており、金融庁は2015年にその指針である「コーポレートガバナンス・コード」をまとめた。 

 スミス氏は、独立取締役(当該企業とは直接的な利害関係のない有識者など。社外取締役よりもさらに独立性が高いとされる)を入れることが、コーポレート・ガバナンス向上の鍵だとしている。そして、「実際にコーポレートガバナンス・コード策定後の2年間で、過半数の企業に一人も独立取締役がいない状況から、今では5分の4の企業に2人以上在籍している状況になった。これは衝撃的な変化だ」とアベノミクスの効果を前向きに捉えている。

◆今後も不正の発覚は続くか?
 スミス氏の記事の論調は、東京工業大学の研究結果を元にしている。それによれば、株主からプレッシャーを受けることが少ないために、経営者が大きな決定をすることを避け、企業改革が進まない悪循環に陥るという「平穏仮説」が、不祥事が伝えられる日本企業の多くに当てはまるという。

 スミス氏は、金融庁が「スチュワードシップ・コード」(投資家が投資先企業の株主総会などにどのような態度で臨むべきかを定めた行動原則)を策定するなど、日本政府も「平穏仮説」を打ち破る必要性を認識していると指摘。官僚が資本家に企業改革を教えるというのは「クレイジーに見える」としつつ、今のところ、収益アップや独立取締役の増加といった数値上の効果は出ていると分析している。

 スミス氏は神戸製鋼のスキャンダルにより、古い秩序の膿が出きったことに期待したい、と記事を結んでいるが、BBCとロイターはともに、一連の大手メーカーの不祥事は氷山の一角に過ぎないと見ているようだ。もともと構造的に蔓延していた不正がインターネットの普及により表面化してきているだけという識者の指摘や、内部告発者を保護する法律ができ、不正の報告がしやすくなったといった根拠が挙げられている。いずれにせよ、今が「メイド・イン・ジャパン」のターニング・ポイントなのは間違いないようだ。

Text by 内村浩介

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