「アベノミクスへの疑念払拭、継続すべき」GDP6期連続プラス、海外経済紙が要因分析
今年4-6月期の日本の国内総生産(GDP)の速報値が14日発表され、前期比1.0%増、年率4.0%増で、11年ぶりに6四半期連続のプラスを記録した。プラス成長が1年半にわたって続いていることになる。海外メディアもこの日本経済の好調ぶりを報じている。
◆アベノミクスへの疑念が払拭された
フィナンシャル・タイムズ紙(FT)は、「日本経済の実態は思われていたよりも良かった」と評価。ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)も、同社が独自に調査したエコノミストの予想値(年率2.5%増)を上回る結果だったと報じている。
FTは、先進国の経済は、2007年の世界金融危機以来長期停滞の恐怖にさらされているが、日本はその20年近くも前から、バブル崩壊の影響で低成長とデフレに苦しんできたと書く。世界金融危機への対応についても、翌2008年に量的緩和を実施し、続けて積極的な財政刺激策を行ったアメリカを引き合いに「安倍晋三が首相に就任した2012年まで待たねばならなかった」と日本の腰の重さを指摘。さらに、その安倍政権が目指す生産性の向上や少子高齢化への対応もうまくいっているとは言えない中、日本経済の復活に対して「懐疑的な見方が広がった」と、これまでの世界の反応を俯瞰する。
しかし、アベノミクスと日銀の政策への疑念は、今回の数字により払拭されたとFTは見ているようだ。「日本は今、そのような疑念が見当違いだったと証明している」とし、「さらに注目すべきは、今世紀最長の成長コースに乗っていることだ」と、日本経済の復活がどうやら本物であることを強調している。WSJも、「世界第3位の経済は、2006年以来最長のプラスの道を歩んでおり、同時期のアメリカの2.6%増を上回っている」と、好調ぶりを強調している。BBCも、4-6月期の数字は総合的に「良い結果であり、アベノミクスの追い風だ」というエコノミストのコメントを紹介している。
◆内需拡大を刺激する今のやり方を続けるべき
今の好調ぶりを牽引しているのは、個人消費と企業の設備投資を中心とした内需拡大にあるとされている。「日本は伝統的に純輸出に頼った成長を批判されてきたが、この四半期の変化は特に消費と内需に牽引されている」と、FTもこの点に注目している。そして、「ドナルド・トランプのような人々を苛立たせた」円安誘導策から転じて、デフレ脱却を目指すマイナス金利政策に主眼を置いた日銀の政策が功を奏したと評価。「日本の金融政策は、為替相場を通じたやり方よりもパワフルに効果を発揮したのは明らかだ。これを続けるべきだ」としている。
WSJは、個人消費が拡大した要因の一つに、2008-2009年の麻生内閣時代に行われた消費刺激策により車や家電を買った人々が、買い替えの時期を迎えていることを挙げる。同紙は「スマートフォン部品や半導体機器の海外需要が日本経済を牽引した以前と違って、4-6月期の鍵となった要素は、強い個人消費だった。家計の支出は年間3.7%のペースで増えた」と書く。
デフレ脱却も、ゆるやかなペースではあるが、進んでいるという見方が広がっているようだ。WSJは、「日銀の2%目標には程遠いが、日本は物価下落が続いた20年間から抜け出し、ようやく緩やかなインフレ傾向になった」と書く。6月期のコアCPI(消費者物価指数)はプラス0.4%で6期連続増となっている。
◆賃上げと政策の継続が鍵
ただし、今後の情勢については、懐疑的な見方もある。WSJは、「内需はこのレベルを維持できない。次の第3四半期には、減速するだろう」という識者の見解を紹介。思うように平均賃金が上がっていないことが不安要素だとしている。夏のボーナスの削減傾向の影響で、6月の平均賃金は前年比0.4減を記録した。
また、わずかに上昇傾向がある物価についても、イオンやセブン-イレブン・ジャパンといった流通大手が大規模な値下げに踏み切っていることを例に、「消費者は日銀の思惑とは逆に、値下げを願っている」と、WSJは政策と消費者感覚のズレを指摘する。そのため、今後の持続的な成長の鍵は、内需拡大の裏付けとなる賃金の上昇にあるという見方が強い。
一方、FTは「日本がここからどこへ向かうかは、政治家たちが冷静さを保てるかどうかにかかっている」としている。安倍政権が信念を曲げずにこれまでの政策を続ければ、さらに良い方向に向かうという見解だ。政権への支持率が下がっているという不安要素はあるが、「公平に言って、これ(支持率低下)は経済政策への不満ではなく、おもに汚職スキャンダルへの対応のまずさを反映している。信頼できる挑戦者がいないため、安倍氏の地位は今のところ安泰だ」と、当面はアベノミクスが継続されると見ている。