日本全土で「爆買い」に備えるべき? 急増する訪日中国人、鳥取の村で住民困惑も

中国人観光客

 日本を訪れる外国人旅行者数が急増している。2013年に初めて1000万人を突破したかと思えば、2014年には1341万人に上った。今年は昨年をさらに上回るペースだ。特に増加が著しいのは中国からの訪問者で、日本での「爆買い」ぶりは海外でも有名になっているようだ。

◆今年はかなりのハイペースで増加中。とりわけ中国から
 日本政府観光局(JNTO)によると、今年1~5月までの各月、訪日外国人数は前年を大きく上回っており、その伸び率は平均44.9%に及んでいる(1~3月は暫定値、4・5月は推定値)。総じて、アジアからの伸び率が好調のようだ。中国からの訪問者数は特に増えていて、1~5月の平均では2倍超。春節のあった2月には約2.6倍、5月には2.3倍超となっている。

 2014年の国別の訪日観光客数では、台湾からが約283万人でトップ、次が韓国の約275万人、中国は約241万人で3位だった。今年のこれまでのデータでは中国がトップに躍り出ている。

 USAトゥデイ紙は、日本政府の当初の予想では、今年の訪日外国人旅行者数は1500万人とされていたが、このままのペースで行くと、1800万人を超えるかもしれない、としている。

 同紙は、訪日外国人旅行者の増加について、円安、ビザ発給要件の緩和、2020年東京オリンピックを視野に入れたマーケティング活動が、ある程度、原動力になっていると指摘する。また、アジアにおける中流層の増加と、経済急成長も増加を促進しているとした。

 インドネシアからのツアーの添乗員は、日本への旅行費用はヨーロッパとだいたい同額で、まだ高価だけれども、ビザの取得ははるかに容易で、そのことが大きく影響している、と同紙に語っている。

◆2014年は外国人旅行者が日本で2兆円以上消費。今年はさらに?
 USAトゥデイ紙は、外国人旅行者の増加が日本経済に好影響を与えていることに着目している。観光は、日本経済における数少ない明るい材料の一つだ、と同紙は語っている。20年間の低成長もしくは無成長の後、日本はやっとゆっくりとした回復を始めているところだが、その回復は一向に確かなものではない、としている。

「私たちは、観光が、日本経済でますます重要な役割を果たすものと考えています」と、観光庁の髙橋一郎観光戦略課長が6月に語ったと同紙は伝えている。

 外国人旅行者が2014年に日本で消費した額は2兆278億円に上った。同紙によると、これは2013年から43%増であるという。今年はさらに上昇が期待できそうだ。その大きな原動力となっているのが、中国人旅行者によるいわゆる「爆買い」である。USAトゥデイ紙は、日本滞在1日にして数千ドルを買い物に費やす中国人夫婦を紹介している。この人たちのように大金を使う旅行者が、日本の観光のにわか景気の原因の一端を担っている、としている。

 中国人旅行者の際立った購買力は、日本中で「レジェンド」を生み出している、と台湾紙『中国時報』の英語サイト『ウォント・チャイナ・タイムズ』(WCT)は語る。2014年、台湾からの旅行者が、中国からの旅行者を数で上回っていたが、消費額では台湾3544億円、中国5583億円と逆転されていることを伝えている。

 USAトゥデイ紙によると、中国人旅行者の消費額は、2014年の平均で1人当たり1878ドル(現在のレートで約23.1万円)に上り、国別で1位だったと伝える。アメリカ人は同1324ドル(約16.3万円)だったとのことだ。

◆中国株価不安でインバウンド銘柄に影響?
 ブルームバーグは、中国人旅行者は最大の消費者であり、温水洗浄便座からダイヤの指輪まで、あらゆるものに気前よく消費している、と語る。しかし中国ではこのところ、株価の大きな下落があった。今週は持ち直しているが、底値にあった9日付のブルームバーグの記事は、これによって訪日旅行者数が減り、消費が減るかもしれないとの懸念が生じている、と伝えた。そして、日本の株式市場で、国内最大規模の免税店ネットワークを持つラオックス、中古ダイヤモンドの販売も行うコメ兵、温水洗浄便座を製造するTOTOの株価が下落したと伝えた(現在は回復傾向にある)。

◆想像以上? 中国人旅行者の購買力、村を慌てさせる
 今月2日、大型客船「クァンタム・オブ・ザ・シーズ号」が、鳥取県と島根県にまたがる境港に寄港した。中国・人民日報ウェブサイト「人民網」によると、乗客の中国人観光客4000人ほどが、鳥取県の日吉津村を訪れた。同村の人口は3455人。それを上回る数の中国人が訪れ、地元商店の商品を買い占めた。その結果、地元住民らの生活が一時困窮したという。このニュースを英デイリー・メール紙も伝えた。

 人民網によると、これについて、日本のネットユーザーからは「虫の大群みたいだ」というコメントが寄せられたという。また中国のネットユーザーからは「日本の観光客受け入れ能力が低すぎる」といった声が上がったそうだ。

 もともと、境港への寄港は予定になかったものだが、中東呼吸器症候群(MERS)の影響で韓国への寄港を取りやめ、代わりにこちらへの寄港が決まったようだ。準備に十分な時間が取れなかったことも想像されるが、中国人旅行者を受け入れるにあたって、今後、地方部でも、十分なノウハウが共有されていくことが望ましいだろう。

◆コンビニが得意とする食料品、化粧品なども免税対象に
 WCTは、セブン‐イレブンが一部店舗ですでに実施している免税サービスを、今月中に約1000店舗に拡大することを伝えている。新たなレジシステムにより、手続きは5分程度で完了するそうだ。

 セブン‐イレブンは、昨年12月より一部店舗で免税サービスを開始している。WCTは、日本では過去には、大規模なデパート、量販店、薬局だけが、免税カウンターを設置していた、と伝える。セブン‐イレブンが免税サービスに乗り出した訳は、昨年10月に、消費税の免税対象品目が、食料品、化粧品など、消耗品を含め全ての商品に拡大されたためである。さらに、免税の対象となる購入金額も、消耗品の場合は1店舗で5001円以上となった。家電製品や衣料など一般物品の場合の、1店舗で10001円以上より引き下げられている。

 デイリー・メール紙は、外国人旅行者が以前より多く消費している理由は、日本製品の質の高さ、円安、日本の免税制度の拡大のおかげとされている、と語っている。

Text by 田所秀徳