4月貿易収支、再び赤字も…輸出は予想上回る伸び 回復示す指標に投資家も注目

 財務省は25日、4月の貿易統計(速報)を発表した。3月の貿易収支は2年9ヶ月ぶりの黒字だったが、4月は赤字に戻った。しかし、輸出額は前年同月比8%増で、エコノミスト予想より良かったと多くの海外メディアが報じている。赤字幅も、2012年3月以来の小幅なものだ。25日の東証1部では、円安ドル高の流れを受けて、輸出関連株を中心に幅広い銘柄で買われ、日経平均株価の終値が2万413円77銭と、約15年ぶりの高値となった。日本経済の回復に、投資家は手応えを感じ始めているのかもしれない。

◆輸出を景気回復の切り札とみる政府・日銀
 輸出では、自動車、半導体等電子部品などが好調だった。対米輸出は特に好調で、輸出額は前年同月比21.4%増だった。輸出全体としては同8%増で、8ヶ月連続の増加となった。しかし3月の同8.5%増には及ばなかった。3月は、春節の反動で中国などへの輸出が押し上げられていた、とブルームバーグ(日本語)は伝えている。

 ロイターの調査によると、エコノミストは6.4%増(中央値)を予想していたそうだ。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙、ブルームバーグも、輸出が予想よりも伸びた、と伝えている。

 WSJ紙は、政府と日銀は、昨年4月の消費税率引き上げによって日本経済が大打撃を受けた後で、今年度、より力強い成長を支えるものとして、外需(輸出)を当てにしている、と語っている。ブルームバーグは、円安が日本製品の海外での競争力を後押ししており、輸出型の大企業を励ますことが、安倍首相の経済政策の柱の一つになっている、と語る。

◆原油安の影響で引き続き輸入額が抑えられた
 輸入では、引き続き原油安の影響が大きかった。輸入量は前年同月比9.1%増だったが、原油価格は昨年のほぼ半分であり、輸入額は同34.6%減となった。液化天然ガスも同35%減となった。なお、石油輸入量が増加したのは、昨年4月は消費税率引き上げの影響で原油輸入が少なかったためだと、三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部の芥田知至主任研究員がWSJ紙で解説している。

 輸入額全体では、前年同月比4.2%減だった。輸出から輸入を差し引いた収支は、534億円の赤字となった。WSJ紙と日経新聞の調査によるエコノミスト予想では、3250億円の赤字とされていたそうだ(WSJ紙)。

◆日本の経済指標にいま注目が集まっている?
 米ニュース専門放送局CNBCは、日本でさまざまな経済指標の発表が相次ぐことで、今週も日本がアジアのマーケットの関心の中心になるだろう、と語る。先週には、1~3月期のGDP成長率が発表されたが、エコノミストの予想を上回るものだった。日本経済への楽観が生じ、日経平均株価が週間で2.7%上昇することにつながった、と語る。今回発表された4月の輸出も、エコノミストの予想を上回った、と伝える。そして、4月の物価上昇率、雇用統計、鉱工業生産、家計支出のデータが、今週末に発表されることになっている、と伝える。

 日本は立ち直る態勢が整っているということを裏付ける、多くのデータの発表が控えており、投資家は期待している、とCNBCは語る。「日本では、雇用統計が引き続き堅調であり、家計支出ではわずかに改善があり、鉱工業生産では急回復があるのを予想しています」と、AMPキャピタルの投資戦略部門責任者でありチーフエコノミストのシェーン・オリバー氏は22日発表の短信で語ったという。

◆アメリカと中国の外需頼みには、先行きの不確かさも
 今後の日本の貿易の見通しに関しては、アメリカ、中国の景気減速を懸念する意見が目立った。

「海外の経済、特にアメリカと中国の活力によって、今後も輸出が活気づけられるかどうかには、不確かさが待ち受けている」と第一生命経済研究所の新家義貴主席エコノミストはWSJ紙に語っている。ブルームバーグによると、国際通貨基金(IMF)も22日、中国とアメリカでの予想を下回る成長率が、日本の輸出主導の回復を遅らせるかもしれないと発表したという。

 ロイターは、その懸念をさらに強く示す。中国とアメリカ経済の減速が、見通しに影を落としており、外需の面では心配な兆候である、と語る。輸出額が、3月の前年同月比8.5%増から、同8%増になったことを減速と捉え、これが昨年の景気後退からの回復を妨げかねない、と語る。

 CNBCは、29日にアメリカの1~3月期のGDP成長率の改定値が発表されることを伝える。暫定値では年率換算で前期比0.2%増だったが、改定値はそれをはるかに下回って、マイナス成長となることが予想されているという。しかし、これには季節調整の仕方で問題があり、アメリカ経済については、それほど心配いらないという見方があることを伝えている。

◆貿易赤字はこの先も続くのか
 日本の貿易赤字がこの先も続くか否かについては、さまざまな意見があるようだ。

 英調査会社キャピタル・エコノミクスの短信によると、貿易収支は5月も引き続き赤字になりそうだという(WSJ紙)。円安ドル高が今後再び進行するようなら、原油輸入額がより高くつくようになるだろう、としているという。

 明治安田生命保険の小玉祐一チーフエコノミストは、内需が回復し続けているため、(原油の)他にもさまざまな分野で輸入が拡大している兆しがすでに見られる、とWSJ紙に語った。赤字は継続する可能性が高い、ということかもしれない。

 燃料価格の下落の影響がさまざまな品に及んでおり、輸入の伸びはこの先も低いままだろう、と野村證券の須田吉貴エコノミストはブルームバーグに語っている。貿易収支は4年間赤字が続いたが、同氏は2015年は黒字に戻ると予期しているという。

Text by NewSphere 編集部