経常収支、9ヶ月連続黒字 円安の恩恵受ける日本、輸出苦戦の韓国と米メディア対比

 3月の日本の経常収支は約2兆8000億円の黒字となり、貿易収支の改善や海外での投資収益の増加が貢献し、2008年以来最大となった。昨年度通期では、7兆8100億円の黒字となり、4年ぶりに黒字幅が拡大した。一方で、アベノミクスによる円安効果が出始めた日本とは対照的に、ウォン高が続く韓国では輸出の不振に悩まされている。

◆日本経済復活の兆し
 ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)によれば、3月の経常収支は前年同月の20倍以上と拡大。エコノミストの予想であった2兆700億円を大きく上回っており、2兆円を超える黒字は、世界金融危機以前の水準だと言う。

 経常収支はここ9ヶ月連続で黒字。原油安、円安による外国人観光客の増加、日本企業による海外での投資収益の増加が黒字拡大に繋がり、国内消費が伸び悩む日本経済の助けとなった(ブルームバーグ)。

 ゴルフ場の運営者から小売り、製造業に至るまで、経済の変化を観察できる幅広い業界で働く約2000人の回答に基づいた、内閣府の「景気ウォッチャー調査」は、4月について、「景気は、緩やかな回復基調が続いている。先行きについては、物価上昇への懸念等がみられるものの、賃上げへの期待や外国人観光需要への期待等がみられる」とまとめた。フィナンシャル・タイムズ紙(FT)は、この調査では、今年に入ってから全般的に明るい見方が出ていると説明。日本経済が上向いてきたことをうかがわせる、と述べている。

◆本当の回復とはならない?
 WSJによれば、エコノミストたちは経常収支の黒字がここしばらくは続くと見ているが、その規模がさらに拡大するかどうかは疑問だとしている。

「日本の経常収支がリーマン・ショック前の水準に戻って来ていることが、日本回復のサイン」と述べる人々に対し、ジャパン・マクロ・アドバイザーズのチーフ・エコノミスト、大久保琢史氏は、円安により円換算の輸出額は増えたが、輸出量はいまだに顕著に回復はしていないと指摘。国内の労働力需給がすでに逼迫しており、「生産増ができないため、日本の経常収支をさらに改善させることは難しい」と述べている。

◆円安で韓国がピンチ
 ブルームバーグは、円安のおかげで製造業の輸出が好調な日本とは対照的に、韓国の自慢の輸出が、円、ユーロに対するウォン高のおかげで、伸び悩んでいると指摘する。昨年8月以来3度の利下げで景気持ち直しの兆しは出ているものの、韓国の輸出はここ4か月連続で減少。自動車、船舶といった製造業の大黒柱にまで弱さが拡大しており、金額だけでなく輸出量でも縮小しているという。

 ウォンは円に対して上昇を続け、4月に7年2か月ぶりの高値を記録。ユーロに対しても9年ぶりの高値を付けた。韓国中央銀行は、輸出のために利下げを行うことはないとしているが、HSBCホールディングスのエコノミスト、ロナルド・マン氏は、「日本との競争が激しくなり、このことが韓国の貿易依存の経済における成長の重しとなっている」と指摘。「韓国の輸出の弱さが、金融緩和サイクルがまだ終わっていないという我々の考えを裏付ける」として、さらなる利下げの可能性を示唆した(ブルームバーグ)。

Text by NewSphere 編集部