日銀、物価見通し引下げ さらなる金融緩和をエコノミストが予想

 日銀が2015年度の消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)の見通しを、昨年10月に予測されていた1.7%から1.0%に大幅に引き下げた。2013年4月に導入された大規模な金融緩和で、2年程度で2%の物価上昇率を達成させるという目標を掲げていたが、大きく遠のいた形だ。

◆さらなる金融緩和は無分別と見られるリスク
 ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙は、日銀が難しい選択に直面していると指摘している。10月に決定した大規模な金融緩和(注:マネタリーベースの拡大ペースを年間約80兆円に増額)直後での、さらなる金融緩和は無分別と見られるリスクがあるとする。

 代わりに、日銀が物価指数を現在のコアCPI(生鮮食料品を除く消費者物価指数)から、さらにエネルギーを除く「コアコア指数」に変更すれば、乱高下する石油価格の影響を受けないので、目標達成へ猶予を与えられるだろうとしている。

 しかしながら、「コアコア指数」でもHSBCは2016年度末までの上昇は0.8%と見ているため、2%の目標にははるか遠く、追加の金融緩和が来年中になされるだろうとの見方を示した(WSJ)。

◆金融緩和は必然か
 ブルームバーグは、エコノミスト33人を対象に行ったブルームバーグ・ニュースの調査結果を示した。調査では、33人のエコノミストのうち26人が、日銀は10月末までにさらなる金融緩和を行うだろうと見ている。

 SMBC日興証券の宮前耕也エコノミストは、「10月までに、日銀が、2015年度内かその辺りにインフレが2%に達成すると主張するのは厳しくなるだろう。そのときは、日銀は刺激策を拡大せざるをえない」と述べている。

 しかしながら、第一生命経済研究所のエコノミストで、元日銀行員の熊野英生氏は、日銀はすぐには刺激策の強化は行わず、日銀総裁が期間設定を調整するほかないという見方を示し、金融緩和ではなく期限を緩めて目標達成に向かうことを示唆した。

 それでも、甘利明経産相の言葉を引用して、政府は日銀の2%の目標は来年度での達成は難しいと見ており、政府の見通しでは1.4%となっていることを伝えた。また、早稲田大学の若田部昌澄教授も、日銀は追加刺激策を考えなければならない、としていることを伝えた。

◆黒田総裁は強気も…
 一方、フィナンシャル・タイムズ(FT)紙は、黒田東彦日銀総裁の、日銀は経済が停滞するかインフレ見通しが低下しない限り、追加の大規模な刺激策は行わないとの発言を取り上げている。

 さらにFT紙は、日銀が、原油価格が下げ止まり1バレル70ドルまで上昇していくと見ており、それにより物価上昇が2015年を中心とする期間に2%を達成するとしていると述べた黒田総裁の言葉も引用している。

 ただ、日銀内にもインフレ見通しにそう楽観的でない見方もあることを黒田総裁が把握していることも伝えている。低いものでは2015年度で0.3%、2016年度で0.9%と予測されている。だが、黒田総裁は2%の目標達成が2016年半ばでも期限内だとしているようだ(FT)。

 また一方で、日銀は融資を拡大する金融機関に低金利で資金を提供するプログラムを拡大させることで、市場への資金供給を拡充させる(FT)。

Text by NewSphere 編集部