アベノミクス「第4の矢」が必要! 移民やベンチャー支援を海外コラムニストが提言

 31日午後、日銀は金融政策決定会合を開き、追加金融緩和策の実施を賛成多数で決めた。年60兆~70兆円のペースで増やすとしていたマネタリーベース(資金供給量)を、約80兆円まで拡大するという。

◆不利なデータが出揃う
 ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)は、この日の午前中に公表された数々のデータを紹介している。

・9月の全国消費者物価指数(総務省)
伸び率が前月比0.1ポイント縮小し1.0%に。物価上昇のペースは鈍化が続いている。

・9月の有効求人倍率(厚生労働省)
前月比0.01ポイント低下の1.09倍。2011年5月以来、3年4カ月ぶりに低下。

・9月の完全失業率(総務省)
前月比0.1ポイント上昇の3.6%。2カ月ぶりに悪化。

・9月の家計調査(総務省)
1世帯当たり27万5226円で、実質前年比で5.6%減。減少は6カ月連続。

 このうち雇用に関してWSJは、内閣官房参与の浜田宏一エール大学名誉教授の見解を紹介している。これによると、雇用の持続的拡大はアベノミクス成功のカギだという。

◆進まぬ3本目の矢
 人民日報のウェブサイト『人民網』は「アベノミクスは失敗したか」というタイトルの記事を載せ、「アベノミクスの3本の矢のうち、構造改革はずっとお飾りにすぎなかった」と述べる。

 経済成長を急加速させねばならないとしながら、実際の成長は緩やかなものとなっているのがアベノミクスの矛盾である、と人民網は見る。

◆第4の矢は?
 ブルームバーグ・ビューのコラムニスト、ウィリアム・ペセック氏は、アベノミクスは新しいものでも想像力に富んだものでもなく、日本が10年もしくは15年前に実施しておくべきだったものだと述べる。

 さらにペセック氏は、仮にアベノミクスの3本の矢の全てが実行されたとしても、日本経済の復活には恐らく十分ではないだろうとして、放ってほしい第4の矢として以下を挙げている。

・ベンチャー企業支援(ベンチャー企業向けの優遇税制や規制緩和)  

・「天下り」の廃止(公務員の省庁間での異動)

・賢明な移民政策(シンガポールのような戦略的な人材受け入れの増加)  

・エネルギー政策の見直し(地震の多い国にふさわしい新たなエネルギー源の確保)  

・環太平洋連携協定(TPP、貿易相手に譲歩し過ぎでないかと心配しない)  

・女性枠(公的部門での女性幹部登用の義務付け)

 まだ支持率の高い安倍内閣は、日本経済を立て直す10年に1度の好機に恵まれており、ためらっている時間はない、とペセック氏は結んでいる。

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Text by NewSphere 編集部