謎の“67兆円”株取引キャンセルに、海外メディア騒然 原因は誤入力?

1日、日本株市場で、誤入力によるものとみられる約67兆円の巨額のクロス取引が入り、すぐにキャンセルされる事件が起きた。ミスによる巨額損失事件がこれまでにも起きており、ブローカーの説明責任についての懸念が再燃しそうだ。

【一国の経済規模を上回る額】
ブルームバーグは、1日の午前中に、トヨタ、ホンダ、キヤノン、ソニー、野村といった40を超える銘柄に市場外取引で「スウェーデン経済の規模を上回る」67兆7800億円の注文が入ったと報じた。最大の注文はトヨタの19億6000万株で、同社発行済株式数のじつに57%、金額にして12兆6800億円だった。

もっとも、今回の取引は、OTC取引(売り手と買い手が互いに売買の相手を選び、証券取引所を経由しない、直接取引)であったため、取引前に取り消すことができた(ガーディアン紙)。そのため、ある証券会社の幹部は、「市場外のクロス取引だから、市場にあまり影響はない」とブルームバーグに答えている。

【誤入力は珍しくない】
今回のミスの原因を、香港の証券会社社長、ギャビン・パリ―氏は、「ブローカーが株数と株価を間違ったのではないか」と推測する(ブルームバーグ)。入力ミスとしては、2009年にゲームメーカー、カプコンの転換社債をUBSが3000万円のところ3兆円で発注したことや、2005年、みずほ証券がジェイコムの取引で61万円1株売りのところ、1円61万株売りと入力してしまったケースがある(フィナンシャル・タイムズ紙、以下FT)。

FTは、誤入力はしばしば巨額損失や市場の大幅な変動の原因となっていると指摘。テクノロジーの進歩のおかげで、市場は圧倒的にコンピュータ化が進んでいると述べる。アメリカでは高頻度取引でのソフトウェアの欠陥が原因とされる、説明のつかない有名企業の株価急上昇がこれまでにも起きており、株式市場に被害が出ていると報じている。

その他としては、新しいコンピュータ・アルゴリズムや研修生が、間違った数字を取引システムに入力して、急な株価の上昇の原因となる場合もあった。ウォール街では、本をキーボードの上に落としてしまい、それが「前の取引」注文を繰り返すキーファンクションに当たってしまったというジョークも、ずっと語られている(FT)。

【規制強化も人為的ミスは続く】
前述のパリ―氏は、今回は「誤入力があったということは過度に複雑な問題ではない。しかし説明責任の問題が再燃した」と述べる。

アメリカでは2012年に証券仲介大手のナイト・キャピタル・グループがコンピューターの自動注文による障害で大損失を出し、市場を混乱させた事件を受けて、証券取引委員会がルールの見直しを進めた(ブルームバーグ)。

証券会社と金融機関の自主規制組織である日本証券業協会も、ルール作りと検査に力をいれ、金融庁もすべての証券取引を監督する(ブルームバーグ)。しかし、取締りにも関わらず「人為的ミス」の根絶はどこの国でもできていないと、ガーディアン紙は述べている。

失敗学のすすめ (講談社文庫) [amazon]

Text by NewSphere 編集部