法人減税で社会保障費削減は不可避 代替財源をめぐり、米紙が指摘

 政府は24日、法人税減税や配偶者控除の見直しを含む成長戦略について閣議決定した。このいわゆる「第3の矢」と呼ばれる方針を、海外メディアはどう見ているのか。

【法人税引下げは吉とでるか凶とでるか】
 安倍首相の計画では、現在35.64%の法人税を30%以下にまで下げる方針だ。この税率は、世界でも最高水準である。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙(ウォール紙)によると、法人減税は外国からの投資増加やビジネスの活性化によるプラスでマイナス分をある程度は相殺できると見る向きもある反面、単なる税収減になると考える者もいるという。その場合、他の税源を考える必要があるが、この難しい問題の決断は来先送りされたと同紙は伝えている。

 政府当局者の中には「税収のマイナス分は、法人税法の抜け穴を塞ぎかつ不要な控除を廃止することで賄える」との声もあるという。実は現在、日本では70%以上の企業が法人税を払っていない。法人税の税率は所得税より高いため、中小零細企業は、税を納めるよりオーナーおよび他に利益を分配してしまい、損益ゼロもしくは若干赤字にしてしまうからだという。

 そのため、「収入の規模に応じて課税するのではなく、取引の規模に応じて課税する」という案も検討にあがっている。しかしこの案は、儲かっていない会社にも課税するなど「いじめに等しい」と、小規模事業者の猛反対を巻き起こしたという。また設備投資や研究開発への優遇措置の廃止も経団連の断固たる反対を受けている、と同紙は伝えている。

【増え続ける社会保障費はどう賄う】
 日本は少子高齢化が進み、社会保障費は増加の一途をたどっている。昨年成立した法では、労働人口の減少に伴い年金支給をひとりあたり0.9%ずつ毎年削減していかなくてはならないが、支出の削減に関する明言は安倍首相の発表には含まれなかった。

 ウォール紙は、社会保障費の支出削減以外に道はない、と指摘する。麻生太郎副総裁兼財務大臣は「社会保障費の増大が落ち着くまで消費税は上がり続けざるを得ない」との見解を表している。専門家の多くは、社会保障費の削減をしなければ日本の消費税は30%かそれ以上になるだろう、との見方であるという。

 「だれも30%の消費税など望んでいない。日本の財政は、支出の削減以外に安定の道はない」とモルガン・スタンレーチーフエコノミスト、ロバート・フェルドマン氏は語っている。

【今後は実行力がカギ】
 ニューヨーク・タイムズによると、専門家達は「第3の矢は正しい方向に進んでいると思われるものの、多くの人はもっと具体的な計画と実行が見たい」と指摘しているという。

 同紙によると、日銀幹部からは「今後のカギは、安倍首相がその言葉通りに実行できるかどうかにかかっているだろう」との声が上がっているという。またシティグループ証券エコノミストの飯塚尚己氏は「安倍首相の第3の矢は、矢というよりはダーツのよう」と述べ、政府はもっと大胆な方針が必要と語っている。

 BBCのリンダ・ユエ氏は「変化は経済成長に不可欠」と語っている。しかし、その変化が恩恵となるまでには時間がかかるとの指摘もある。日本総研の湯元健治氏は「例え政府が成長戦略を発表しても、実施にはまだ各種法整備の必要があり、企業が実際に動けるまで時間がかかる。だから本当の成長が数字に表れるまで10年や20年は要するだろう」と分析しているという。


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NewSphere編集部
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Text by NewSphere 編集部