中国、TPPに対抗? FTAAP構想めぐり日米豪などと駆け引きか

 中国・青島で行われていたアジア太平洋経済協力会議(APEC)の年次貿易閣僚会合が18日、閉幕した。主題となったのは、長年頓挫したままであったアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)構想を2025年までに合意に持ち込むという、中国の提案であったと報じられている。

【貿易主導権の奪い合い】
 ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、アメリカや日本は「すでに交渉中の他のアジア太平洋貿易協定を遅らせる可能性がある」との理由で、この提案に難色を示した。同紙によると、米国がTPPを主導することで世界的貿易政策に影響力を保ち、自らのスタンダードを世界に広めようとしているのと同様のことを、中国も狙っているのだという。

 中国は16アジア諸国による地域包括的経済連携(RCEP)に加わっているが、これは「野心に欠けTPPに遠く及ばないと交渉担当者でさえ認める」代物であった。

 また11月には、中国で習近平体制下初のAPEC首脳会談が予定されていることもあって、中国は指導力アピールを狙っているのだという。

 したがって、必ずしも貿易自由化の理想に向け邁進しているというわけではなさそうだ。フィナンシャル・タイムズ紙は、中国は昨年、1997年の情報技術協定(ITA)の更新について、多数のハイテク製品分野の関税撤廃に反対し、協議を決裂させていると指摘した。しかし今回、このITA更新協議には何らかの進展があったらしい。ただしウォール紙によると、中国は乗り気ではなく、アメリカなどに押し切られた形であった模様だ。

【天秤を覗く各国】
 米中の綱引きの結果、2025年という数値目標は見送られたが、米国と中国が議長を務め実現可能性を研究する、貿易投資委員会ワーキンググループの設置は合意された。「FTAAPの最終的実現に向けたキックオフおよび総合的かつ体系的なプロセス前進」のためと謳われており、今年中にロードマップを策定するという。

 TPPの方も順調とは言えない中、他の各国には一定の期待もあるようだ。

 オーストラリアのロブ貿易相はFTAAPについて、「我々は、中国がプッシュしているのと同じぐらい熱心です」「APECは強力なフォーラムです。その全国家が同意するなら、他も同意するでしょう」などと乗り気な発言をしている。

 ニュージーランドのグローサー貿易相は「誰が契約をまとめるのに必要な手段を持っているか、それを制定する支配力を持っているか」様子見を示唆し、「我々はTPPのカゴにすべての卵を入れてはいないのです」と語っている。

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Text by NewSphere 編集部