1~3月GDP、年率5.9%増 海外メディア、“アベノミクスの成果”と評価も、リバウンドに警鐘

 15日、内閣府が発表した2014年1-3月期の実質国内総生産(GDP)速報値は、前期比年率換算で5.9%増であり、大方のエコノミストの予想を上回るものだった。

 このGDPの伸びは、4月に行われた消費増税前の駆け込み需要によるものとみられている。

 海外各紙は、日本経済が翌四半期に見舞われるであろうリバウンドを見越した上で、これに対処する上で重要となる分野について、エコノミストによる分析を紹介している。

【輸出】
 今回の発表で、財・サービスの純輸出はマイナス0.3%ポイントだった。

 フィナンシャル・タイムズ紙は日本の輸出における構造的な弱さが問題だと述べる。安倍政権が円安を推進したにも拘わらず、自動車、エレクトロニクス、その他の輸出は伸びず、輸入コストは高騰している。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙(以下、ウォール紙)は、中国経済の減速が、日本の輸出先の半分を占めるアジア全体の成長の足かせになるという。日銀や国際通貨基金(IMF)は、欧米の回復がアジアの低迷の影響を補うと予想しているものの、アメリカの最近の経済指標には、それほどの強さがないと見る。

【民間設備投資】
 今回の発表では、民間設備投資が前期比4.9%増と大きく伸びた。アベノミクスの「第三の矢」は「民間投資を喚起する成長戦略」である。

 アメリカのニュース専門局CNBCは、「設備投資支出の回復は特に心強い。アベノミクスの効果があったことを示すものだ」というRBS証券・西岡純子氏の言葉を紹介している。

 フィナンシャル・タイムズ紙は、設備投資の伸びは、1つには企業が増税前の需要増に合わせて増産体制を整えたからだろうとしつつも、企業の増収分は設備の長期的な「先行的グレード・アップ」にも流れているという、野村証券の木下智夫氏の言葉を紹介している。

【賃金】
 ウォール紙は、第1四半期の被用者の実質所得が前年同期比で0.7%減少していることを挙げ、賃金の上昇がインフレについて行けるかが、短期的なリスク要因であると述べる。

 小売業界では、4月の消費需要の落ち込みは想定の範囲内だったという意見が支配的だが、消費税の3%引き上げが反映される第2四半期はさらなる所得の実質減が予想されるため、個人消費には逆風になると同紙は見る。

【サービス業】
 さらにウォール紙は、建設、外食、小売業界が人手不足に悩んでいると述べつつ、IMFのエコノミストであるロマン・デュバル氏の見方を紹介している。デュバル氏は、日本が消費税引き上げ後の落ち込みから力強く立ち直れるかどうかは、国内経済の7割を占めるサービス業界の改革に断固とした姿勢で取り組めるかにかかっているという。

 同紙はまた、日本はまだ製造業部門に労働者を抱え込み過ぎており、この人々をサービス分野に移すことができれば、彼らはもっと生産性を発揮できるだろうという、UBS証券の青木大樹氏の見方を伝えている。

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Text by NewSphere 編集部