TPP交渉 甘利大臣前向きも、米高官は懐疑的 海外紙は“対中包囲網”の側面に注目

 環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の首席交渉官会合が、12日からベトナムで行われている。米国と新興国の対立が激しかった知的財産の分野で、溝が埋まりつつあるという。甘利経済再生担当大臣は、「先進国と途上国との対立が続いたが、かなり収れんしてきている。大きな対立点も解消されつつある。近々まとまってくるのではないか」とコメントしたと報じられている。

【著作権と新薬データの保護期間における歩み寄り】
 日本メディアは、著作権など知的財産分野に注目している。

 著作権の保護期間について、自国同様70年に統一するよう要求する米国に対し、日本やカナダは同調したが、新興国は使用料を懸念し反対していた。また、新薬の特許のデータ保護期間でも、米国が10年に延長するよう主張したのに対し、後発薬に頼る新興国が反発していた。しかし、新興国に対してはデータ保護期間を5年以下にするなどを認める案が浮上し、著作権の保護期間についても歩み寄りの可能性があるという。

【締結までは険しい道のり?】
 TPP交渉の行方について、ロイターは、「来週のシンガポール閣僚会合での最終合意ない」とする、匿名の米高官のコメントを報じた。同氏は、先月の日米首脳会談では、こう着状態であった農業分野や自動車市場で前進がみられたが、幅広い合意に至るまでには一弾の作業が必要、という見解だ。

 またマレーシアのFMTニュースは、ペナン消費者協会の意見書を掲載。マレーシアに不利益になるような交渉からは、即時撤退すべきだとしている。

【中国包囲網になりうるTPP、米国識者の見解】
 経済面にのみ注目があつまりがちだが、デイリー・コーラーに寄稿した米国識者は違った見方をしている。

 中国が東、南シナ海上の領空、領海、島において強硬手段を行使している状況で、アジアの同盟諸国は、米国の安全保障に懐疑的になっている。そんな中、TPPをまとめることで、対中国戦略を確立でき、米国のアジアでのリーダーシップを維持できるという見解だ。

 TPP締結により、中国は自由主義経済政策が浸透したアメリカの同盟国に囲まれることになる。また、現在は2国間で同盟関係が結ばれているが、TPPにより、多国間での結びつきが強まる。さらに、TPP締結により、参加国の最大あるいは2番目の貿易相手国である中国にかわる貿易市場ができ、その結果、中国への依存が少なくなる。つまり、中国包囲網を張り巡らすことができるというのだ。

【先行きは?】
 知的財産権におけるルール作りでも、具体策については各国とも交渉カードを出しておらず、腹の探り合いが続いている状態である(毎日新聞)。各国の思惑が入り乱れ、TPP交渉の先行きはまだ不透明だ。
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Text by NewSphere 編集部